「キスもしていない。体の関係もない。手も2回くらいつないだだけ。その2回も、遠出したときに私からつないだんです。最初は何もしてこない彼に対して、“恋愛経験がないから奥手なのかな”と思っていました。それはそれで遊んでいるよりはいい。結婚と恋愛は別。結婚は生活なのだから何よりもまじめな人が1番だと自分を納得させていました」
「子どもはいらないと言ったじゃないか」
そして2月に入り、入籍する日も決めた。夫婦となることが現実味を帯びてくると、“まったく何もしてこようとしない彼と、このまま結婚していいのか”と言う疑問が頭をもたげるようになった。
「やっぱりそこは聞いておいたほうがいいと思ったんです。それで、『義孝さんは、女性経験ってあるの? 夫婦になったら、そういうことをするのも大事だと思うんだけど』と言ったんです」
すると、とんでもない答えが返ってきた。
「恭子さんは、『結婚しても子どもはいらないって言ったよね。お互いの年齢を考えたら、子どもを産んでも育てていくのが大変だから』って。僕もまったく同じ気持ちだった。だから、結婚してもそういうことをしなくて済む。それが楽でいいと思ったから、この結婚を決めたんだよ。今になって何でそんなことを言うの?」
恭子は、唖然とした。そして、さらに聞いた。
「子どもを作るためだけじゃなくてコミュニケーションをとる大事な方法でもあるんじゃないの?」
すると、義孝は言った。
「僕はもう47歳(当時)だし、性欲自体もなくなってきているし、女性とはこの10年間、まったくお付き合いしていない。体の関係を強要されるなら、結婚する自信がないな」
思いもよらない義孝の言葉に、恭子は頭の中が真っ白になった。その日はそれ以上問い詰める気持ちにもなれず、そのまま別れた。すると夜、義孝から、さらに驚く内容のメールが届いた。
「今はいろんなスタイルの夫婦がいるよね。その例として、こんなブログを見つけたので、URLを送ります。僕はこの夫婦の旦那さんの気持ちが、すごくよくわかります」
そのブログとは、ある夫婦の夫が書いたものだった。“自分たちの夫婦関係は一般的には理解されないかもしれませんが、とても幸せです”というくだりから始まっていた。
“自分と妻には性生活がない一方で、妻にはそれを満たす彼氏がいます。それは僕も公認です。そして、その彼氏と僕はよき友人でもあり、3人はとてもいい関係を保っています”というものだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら