恭子は、私に言った。
「結婚前から、“僕はあなたとしたくないから、そういうことをしたいなら、よそに恋人を作れ”ということなのか! もう私には理解不可能で、どうしたらいいのかわからなくなりました」
話し合う前から、結論を出していた
恭子自身が、とても混乱してしまった。そこで、間に人を立てることにした。第三者の女性にすべてを話し、まずは彼女が義孝と会って、彼の真意を聞いてくれることになった。
その女性と会った彼は、こんなことを言ったそうだ。
「結婚したら“ほかで恋人を作れ”という意味であのブログを送ったのではありません。ただ、自分は結婚してから体の関係を求められても、それができるかどうかわからない。またそういうことをしたいとも思わない。だからそれを求められるなら、精神的に苦痛です」
女性から義孝の言葉を聞いて、恭子は再び唖然とした。しかし、もう親も巻き込み、会社にも結婚することを告げ、結婚式場も、住む場所も、入籍日も決めてしまった。これを覆すにはかなりの勇気がいる。ここまで結婚の話を進めてしまったのは、自分にも責任がある。ここはもう腹をくくろう。まずは結婚をしよう。そのたった1つのことを除けば、人間的には誠実でいい人なのだから。
そして、入籍を2週間後に控えたある週末、恭子、義孝、間に立ってくれた女性の3人で会って、腹を割って話をすることになった。人には聞かれたくない内容だったので、都内のレストランの個室を取った。恭子と女性が待っていると義孝がやって来て、席に着くなり言った。
「今回の件で、自分が結婚に向いていないことがわかりました。婚約は解消してください。結婚は白紙に戻してください」
話し合う前から、結論を出していた。
義孝に言わせると、前回、間に立つ女性に自分の気持ちをすべて話した。彼女は僕の考え方を決して否定しなかったので、もう終わったものだと思っていた。それで、今日はその気持ちだけを伝えにきた。
「言うだけ言ったら、もう逃げの一手。この場から一刻も早く立ち去りたいという態度が見え見えでした。私は、その様子にすごくイラッときました」
それから1週間後に、今度は2人で会った。
「そのときも、私の意見なんてまったく聞こうともせず、今後の具体的な後始末の仕方を話し出したんです。新居の解約費用、結婚式場のキャンセル代、指輪のお金はすべて折半にする。そのお金の振り込みをいつするかという話もしてきて、できるだけ早くすべてを終わりにしたいという態度が手に取るようにわかりました」
そんな彼の様子を見ていたら、恭子もこの結婚に未練がなくなった。その後は、淡々と結婚を白紙に戻すための後処理を各方面でし、お金の精算をして、この話は破談となった。
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