代わり映えしなかったスタジオ勢力図に入り込んだNetflixに続き、さらに今年は『パラサイト』のスタジオである韓国CJエンターテインメントもそこに食い込んだことになりました。これは単なる偶然ではないでしょう。
韓国CJエンターテインメントは韓国財閥の1つであるCJグループ傘下に属し、豊富な資金力と制作力を全面に押し出している動きは以前から目立つ存在でもありました。アジア三大映画祭の香港国際映画祭併設イベント「香港フィルマート2019」のカンファレンスに登壇したCJエンターテインメントのチェ・ヨンウチーフプロデューサーがこんな発言をしていました。
アメリカをはじめトルコ、アジア各地で数十本の映画プロジェクトを進めているのは「ユニバーサルで通じるストーリー作りを行うことで、アジア勢もハリウッド制覇を果たすことが可能になる時代がきているからだ」と話していたのです。『パラサイト』がパルムドールもオスカーも手にする前に断言し、実現させてしまうこの強さ。世界の映画界の頂点を狙う戦略を立てていたからこそ自信があったのだろうと後になって思わされます。
「国策」として世界のトップを目指してきた
韓国は20年にわたり国策として世界のトップを目指し、テレビ、映画、音楽といったエンターテインメント全体で攻勢をかけていることも大きく影響しています。いわば総力戦。プラットフォーマーだけでなく、テレビ、映画の分野でスタジオとしても足固めし、総力で攻めるNetflixと共通しています。一定のユーザーから強固な支持を得るコンテンツ作りと、国際舞台ではしたたかに攻めるという点も似ています。技術の進化やメディア環境が変化しているタイミングも味方にして、勢力図が変わるべきときに攻め入ったことも同じ動きと言えます。
一方で、Netflixと韓国がエンターテインメント界の勢力図に変化をもたらす存在が明らかになる時に限って、日本国内では自国の立ち位置を気にする議論が多少なりとも沸き起こります。今回のアカデミー賞では『スキャンダル』のメイクアップ&ヘアスタイリング賞でカズ・ヒロ(辻一弘)が受賞し、カズ・ヒロにとって昨年に続く2回目の受賞の快挙も話題に上っています。思うにまさにこれが個人戦では世界に勝てる日本を象徴するものだと思います。
総力戦ではNetflixや韓国のような正攻法が試されていない日本。個人戦で道を拓く姿が今の日本の現実。そんなことも印象づけられたアカデミー賞となりました。
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