これら圧倒的な強さを示すことになった作品を「韓国映画の1作品の快挙」として捉えるだけでは短絡的な話と思わざるにはいられません。もちろん、話題作を純粋に見て楽しむことを否定しているわけではなく、個人が感じる面白さや感動に理屈はありません。ただし、今回は『パラサイト』オスカー4冠獲得の事実を深読みする必要もあると思うのです。なぜなら、世界のエンターテインメント界の分岐点を示すものになったからです。そのきっかけを真っ先に作ったのはNetflixでもあります。
Netflixが主役と見えたが…
前哨戦で注目されたことの1つがスタジオごとのノミネート作品数でした。24作品がノミネートされたNetflixが最多となり、続いてディズニー22作品、ソニー20作品、ユニバーサル13作品、ワーナー12作品でした。ここまではNetflixが主役と見えたアカデミー賞でもありました。アメリカ各誌もNetflixの動向についてこぞって触れています。レッドカーペットに登場したコンテンツ最高責任者のテッド・サランドスに感想を求め、とくにNetflixが多額に費やす作品のPRキャンペーン予算について言及する記事も多くみられました。
結果はNetflixが2作品を受賞。ドキュメンタリー部門では4年連続で勝ち取る手堅さをみせ、長編ドキュメンタリーの『アメリカン・ファクトリー』が受賞しました。米中の経済と社会、文化を浮き彫りにしていく工場物語で、バラク・オバマ前アメリカ大統領と妻ミシェルが立ち上げた制作会社Higher Ground Productions(ハイヤー・グランド・プロダクション)第一弾作品です。もう1つは、現代版『クレイマー、クレイマー』とも言われる映画『マリッジ・ストーリー』のローラ・ダーンが助演女優賞を受賞という結果です。
昨年はNetflixが4部門を制覇し、映画『ROMA/ローマ』が監督賞・外国語映画賞・撮影賞の3冠を飾り、ドキュメンタリー映画以外でオスカーを初受賞した記念の年でした。それに比べると今年はその勢いを伸ばすことができなかったとも言えます。
前哨戦で接戦となったディズニー、ソニーが軍配を上げ、それぞれ4冠(ディズニーが『トイストーリー4』長編アニメ映画賞、『ジョジョ・ラビット』脚色賞、『フォードvsフェラーリ』音響編集賞/編集賞、ソニーが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」助演男優賞/美術賞、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』衣装デザイン賞、『Hair Love』短編アニメ賞)の結果に。
アメリカのメディアからは「Netflixの苦戦」と報じられながらも、同時にハリウッドの勝ち組とわずか数年で横並びに語られるNetflixの力も見せているものだと思います。
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