「映画ビジネスを学ぶなら、絶対にロサンゼルス」な理由《ハリウッド・フィルムスクール研修記9》

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 氏は『崖の上のポニョ』を例に挙げ、「作品の質も高く、豪華声優陣が吹き替えを担当したが、米国ではニューヨークとロサンゼルス以外ではヒットしなかった」と紹介していました。これは、日本のエンターテインメント業界が今後考えなくてはならない課題でしょう。

8割がパスポートを持っていないといわれる“内向き”なアメリカ人が「Made in Japan」を食わず嫌いしているのか。はたまたこの夏に大ヒットした3D対応のCGアニメに対して、日本が得意とする「手書き風アニメ」には刺激が足りなかったのか。講演を聴きながら、自分なりに原因を探ります。

続いて9時45分からは、「The Big Picture on Small Screen Brand Integration Deals」と題し、コンテンツと広告を融合させる「ブランデッド・エンターテインメント」に関するパネルディスカッション。

米国では日本以上に、「CM飛ばし」が問題となっており、番組の中に広告主のメッセージを入れ込む手法が試行錯誤されています。いちばん簡単な事例は、映画やテレビ番組の中に商品を露出させるプロダクト・プレースメントですが、広告主を満足させるためにも一歩進んだ方法が模索されています。

一見ハリウッドではなく、マディソン・アベニュー(ニューヨークにある広告業界の中心地)の話題に見えますが、そこにはアメリカの広告業界の構造が影響しています。

日本では広告代理店がテレビ局と強い関係にあり、時には共同で番組を企画しています。一方で米国の代理店は基本的に広告を作って、テレビ局のCM枠を買って流すのみ。そこで、米国のテレビ局は広告代理店ではなく、ハリウッドの映画・テレビプロデューサーに依頼して、番組内容と広告主のメッセージが融合された提案を求めています。

日本の広告代理店で勤務していた経験から言って、この米国のやり方が正しく機能するかは疑問です。なぜならば、広告主の課題や商品が守るべきトーンを深く理解しないかぎり、ただ商品やロゴが消費者の目に届いたとしても必ずしも効果的とは言えないためです。

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