正社員は既得権益か? 湯浅誠氏・城繁幸氏が、雇用、セーフティネットを巡り徹底討論

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湯浅 雇用の質はどうなりますか。私は質の劣化は量の増大よりも問題だと思っています。とにかく雇ってくれるだけでありがたいとなると、社会から企業に何ら文句を言えないことになる。それは派遣切りに遭ったような人を増やすだけでは。

 小泉政権では非正規雇用の規制緩和は行いましたが、正社員を含めた労働市場全体の改革は行わなかった。これでは正社員と非正社員の間で競争原理が働かない。すべてのツケは全部非正規に押し付けている身分制。ここが問題の本質です。大手の正社員で年収2000万円もらっている人を1人リストラするだけで、やる気のある20代の非正社員3~4人を雇うことができる。

湯浅 順番が逆ではないですか。この間、非正規の人は契約の中途解除など違法な形で切られている。違法をただすのが先であり、正社員の解雇規制を緩めたらなぜ違法行為がなくなるのかわかりません。

 厳しい法規制を厳密に守れと強制すると、経営が成り立たない企業が出てきますよ。

湯浅 個人が窃盗をしたら、いくらその人が立派な人でも許されない。なのになぜ企業だと、潰れたら元も子もないので多少の違法には目をつぶろうとなるのですか。

 私はトータルでどれだけ利益が残るか考えるべきと思っています。問題は高度経済成長後それに代わる成長モデルを描けていない点にあり、それは人が移れないからに尽きますよ。

湯浅 横断的な労働市場をつくることは同感です。それを妨げるものとして、中途採用に消極的な企業や企業別組合、人材育成能力のない派遣業者などの問題があることも理解できます。ただ移るには環境を整えないと無理。第2のセーフティネットもうまくいってません。

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