膨らむ「河井夫妻疑惑」、安倍政権の時限爆弾に

異例ずくめの参院選支援に与党内からも批判

そもそも、案里氏が出馬した2019年7月の参院広島選挙区での戦いは異例ずくめだった。長年、与野党が2議席を分け合う無風選挙だった同区に、自民の議席独占を目標に2人目の候補として党本部が案里氏の擁立を決めた。その際、それまで5期連続当選してきた溝手顕正元参院議員会長は「ありえない」と猛反発。選挙戦は自民候補の同士討ちの構図となり、安倍首相や菅義偉官房長官の手厚い支援を受けた案里氏が当選し、溝手氏は落選の憂き目にあった。

溝手氏はポスト安倍の有力候補とされる岸田文雄政調会長の後見人で、岸田派の重鎮でもある。ただ、溝手氏は、第1次安倍政権下で実施された2007年参院選での自民惨敗を「首相の責任」と批判し、2012年に安倍首相が自民総裁選に出馬した際も、「過去の人」と評するなど反安倍的な発言も目立っていた。

このため自民党内では、首相が「溝手潰し」を狙って案里氏を擁立したとの見方が駆けめぐった。加えて、広島は故池田勇人元首相や故宮澤喜一元首相の地元で岸田派(宏池会)の金城湯池でもあり、河井夫妻が菅氏とも親しいことから、永田町では「ポスト安倍にも絡む、菅氏による岸田潰し」(閣僚経験者)とも噂された。

自民党内から「えこひいき」と批判の声

さらに、選挙の際に自民党本部から河井夫妻のそれぞれの政党支部に合計1億5000万円の活動資金が振り込まれたことが判明。それに対し、溝手氏への選挙資金は1500万円に過ぎなかったことから、自民党内にも不信感が広がった。

2019年9月の党役員人事で選対委員長に就任した首相側近の下村博文氏は「考えられない金額。総裁や幹事長の指示でしかありえない」と発言。多くの自民党議員からも「基本は1500万円のはず、とんでもないえこひいき」(参院若手)との声が相次いだ。

首相補佐官や自民党総裁外交特別補佐を務めた克行氏は、菅氏の側近としても知られている。選挙中には菅氏が案里氏の応援に入り、スイーツを一緒に食べる写真もネット上に公開された。さらに、選挙応援に入った安倍首相が「岸田氏にも案里氏の選挙カーへの同乗を求めた」(岸田派幹部)ことで、岸田派内には「ひどい仕打ち」(同)との不満があふれた。

1億5000万円について案里氏は事実関係を認める一方、「活動開始から選挙までのわずか2カ月半の間に党勢を拡大しなければいけないということで、短い期間に資金が集中した」と説明。そのうえで「政治資金収支報告書にしっかりと記載し、報告することにしているので、違法性はないと考えている」と語った。

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