膨らむ「河井夫妻疑惑」、安倍政権の時限爆弾に 異例ずくめの参院選支援に与党内からも批判
これに対し野党側は、立憲民主党の安住淳国会対策委員長が「事情聴取されている事件の原資としてお金が使われたとすれば非常に大きな問題だ」と指摘。国民民主党の原口一博国会対策委員長も「カネまみれ、利権まみれの政権を1秒たりとも存在させてはならず、野党が結束して対応したい」と政権の不祥事として厳しく追及していく考えを示した。
ただ、国会序盤の衆参予算委での与野党論戦は、新型肺炎と桜を見る会、IR汚職事件に集中し、河井夫妻疑惑への野党の追及は「捜査結果待ち」(国民民主幹部)となっているのが実態だ。
問題となる河井夫妻の出処進退
広島地検は河井陣営の関係者から事情聴取を行い、捜査は詰めの段階に入っており、「立件(起訴)は時間の問題」(司法関係者)とみられている。そこで問題となるのが、立件された場合の河井夫妻の出処進退だ。
公選法違反事件で総括責任者が起訴されて有罪が確定すれば、当該議員にも連座制が適用されて失職する。ただ、過去には書類送検の段階で議員辞職した例もあり、今回のケースでも野党側が河井夫妻にそれぞれの議員辞職を求めるのは間違いない。
仮に3月15日までに河井夫妻がそれぞれ議員辞職すれば、4月26日に参院広島と衆院広島3区の補欠選挙が実施されることになる。さらに、立件時に辞職しなくても、夏までに有罪確定となれば、連座制適用による議員失職で10月末の補選実施は避けられない。
IR汚職事件では、東京地検が2月3日に秋元司衆院議員(元内閣府IR担当副大臣、自民を離党)を収賄罪で東京地裁に追起訴。やはり公選法違反疑惑で経済産業相を辞任した菅原一秀氏については、司法当局の捜査が続いているとされる。
否認を続けているとされる秋元氏は離党したが、菅原氏は河井夫妻と同様に離党も議員辞職も否定している。これは「議員辞職すれば衆参での補選実施となり、敗北すれば政権を直撃する」(自民幹部)ことが想定されるからだ。しかも、衆参の補選実施は、今年の政局の最大の焦点である安倍首相の衆院解散断行時期の判断とも直接絡むだけに、「首相らにとっても、スキャンダル議員の辞職問題は政局運営の大きな火種」(首相経験者)であることは間違いない。
河井克行氏や菅原氏が菅氏の側近であることから、自民党内では「菅氏の責任問題」(幹部)との批判もあり、首相サイドからは、一連の政治スキャンダルについて「菅氏の危機管理の失敗」と指摘する声も出ている。そうした空気も踏まえ、一部週刊誌は「菅官房長官の2月電撃辞任説」を報じている。
その一方で国会での2020年度予算案の審議日程は順調だ。新型肺炎の世界経済への悪影響を考慮して、野党側も「予算を人質にとった疑惑追及は控える」(国民民主幹部)との姿勢だからだ。このため、「時間を稼げれば、なんとかなる」(自民幹部)との思惑から、2月3日からスタートした衆院予算委での首相らの答弁にも余裕が見え隠れする。
しかし、「河井夫妻の時限爆弾はいつ爆発するかわからない」(閣僚経験者)。首相にとって「当面、広島地検の捜査に神経を尖らせる日々」(同)が続くことは間違いなさそうだ。
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