多くの人は「チケット転売」で実は得をしている 「ダフ屋」の行動が実は理にかなっている理由

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その理由は、チケットの値段が決まっているほうが便利だとみんなが思っているからだろう──予算を立てるとか、休暇を計画するとか。だからこそ興行主も、チケットに定価を印刷することが自分たちの利益につながると考える。ということは、消費者の要求こそがダフ屋稼業を成り立たせている、ということになる。

3つ目の成立条件は、興行主が「市場価格(チケットを購入したい人数と座席数がぴったり一致する価格)」よりも安めに値段を決めていることである。

チケットの定価を市場価格よりも安くすることは、ダフ屋に招待状を出すのと同じことだ。需要と供給の法則により、チケットの値段が安ければ安いほど、発行枚数よりもずっと多くの観客がチケット売り場に殺到する。この不均衡は、それを正そうとする力を必然的に呼び寄せる。

チケット価格が市場価格より「安い」ワケ

チケットがそう簡単に買えないとなれば、購入希望者の中には、少しぐらい高くてもいいと考える者も出てくるだろう。こうしてチケット価格は上昇し、それが需要を減少させて、当初の不均衡が解消されるのである。

ところで、なぜコンサートやスポーツイベントの興行主は、チケットの定価を市場価格よりも安く設定するのだろうか。1つには、安い料金ならより多くの観客を呼べると考えるからだろう。チケットを求めて殺到するファンたちの長い行列は、格好の宣伝材料になる。言い換えれば、興行主たちはチケットを値上げしないことで、本来なら必要だったはずの宣伝費を節約しているのだ。

それに加えて興行主たちは、チケットの完売が約束されているビッグイベントや、話題の映画でも、観客の反発を恐れて一方的な値上げに難色を示すことが多い。

人々は映画の入場料に〝公正な価格〟があると考えており、興行主もそれを無視するわけにはいかないので、『スター・ウォーズ』のよう少しぐらい値上げしても観客を呼べそうな映画でも、彼らはそうしない。映画の人気につけこんで「ぼったくっている」と思われたら、2度と劇場に足を運んでもらえなくなることを知っているからだ。

それ以外にもいくつか理由はありそうだが、とにもかくにも、興行主たちはチケットの値段を市場価格より安くしておいたほうが得だと考えているのである。

チケット価格が需要と供給の均衡点を下回る場合、購入を希望する人数はチケットの枚数を上回る。ここで生じる問題は、限られたチケットをどのように分配するかだ。このときダフ屋は、彼らに与えられた有用な役割を果たすだろう。

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