多くの人は「チケット転売」で実は得をしている 「ダフ屋」の行動が実は理にかなっている理由

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ある人気野球チームは、シーズンの間、1枚平均1000円のチケット料金で3万人収容の球場を常にいっぱいにできるとしよう。ところがシーズン後半の優勝争いが盛り上がり、5万人のファンがチケットの入手を希望した。3万枚しかないチケットは、どのように割り当てられるべきだろうか。これは、観戦を諦めるほかない2万人をどのような基準で選ぶべきか、という問題だ。

稀少な財を分配する際の基本原則として、経済学者たちは「価格による制限」と「価格以外の手段による制限」を検討してきた。「価格による制限」では、需要に応じて価格が上昇するのを認める。われわれの考えでは、需要が供給を上回る商品について、これがただひとつの公正な分配方法である。

「価格以外の手段による制限」は差別的

チケットの値段が2000円まで上がれば、3万人収容の球場で3万人が観戦を希望するようになるとしよう。この場合、チケットの平均価格を1000円値上げする方法はいろいろある。ダフ屋がすべてのチケットを買い占めて、それを1枚2000円で転売してもいい。あるいは2万6000枚を定価1000円で販売し、残りの4000枚をダフ屋が1枚8500円で売ってもいい。これでもやはり、チケットの平均価格は1枚2000円になるからだ。

ダフ屋はこの「とてつもなく高い」価格に対して非難を浴びるだろうが、これは簡単な算数の問題だ。もしも3万枚のチケットを売る適正価格が1枚2000円で、それにもかかわらず2万6000枚を1枚1000円で販売するならば、残りの4000枚の価格は当然、1枚8500円でなければならない。

「価格以外の手段による制限」では、供給可能な水準まで需要を減らすのに値上げが許されていないので、同じ目標に到達するために別の戦略が採用されることになる。

ある興行主は、先着順でチケットを分配するだろう。別の興行主は、購入資格を限定することで申込者数を減らそうと試みるかもしれない。

例えば縁故(親戚や友人にしか売らない)、人種差別(特定の人種にのみ売る)、性差別(男性のみに売る)などなど。ある特定の年齢集団を選びそれ以外を排除するとか、退役軍人や特定の政党支持者に優先権を与えるとか、挙げていけばきりがない。こうした「価格以外の手段による制限」は差別的で、特定の集団を故意にえこひいきするものだ。

一般に、この中では先着順が最も広く採用され、〝公正〟だと考えられている。チケットの発売開始が午前10時だとすれば、人々はそのずっと前から並び始める。夜明け前にやってくる者もいるだろうし、前日から徹夜で並ぶ者もいるだろう。

しかしそうなると、列に並ぶのが嫌な人や、会社を休んで列に並べない人、あるいは召し使いやお抱え運転手に命じて列に並ばせられない人はどうすればいいのだろうか。これも立派な「差別」ではないのか。

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