便利だけど危険も潜む!要注意の「クルマ装備」 運転支援機能やスライドドアで注意すべき点

拡大
縮小

(6)後席の長いスライド機能/極端に後ろへ寄せると追突時に危険が生じる

背の高い軽自動車は車内が広く、後席のスライド位置を後端に寄せると、足元空間が大幅に拡大する。ホンダN-BOX、ダイハツ・タント、スズキ・スペーシアに、身長170cmの大人4名が乗車すると、後席に座る乗員の膝先空間は握り拳3つ半から4つ分だ。LサイズVIPセダンのトヨタ・センチュリーが握り拳3つ半だから相当に広い。

その代わり後頭部はリアゲートに近づいてしまう。軽自動車の衝突安全基準では、前面と側面は時速50kmの衝突で乗員が保護されることとしているが、後面の基準は燃料漏れだけだ。各メーカーとも「後面衝突時の乗員安全性も確認している」と説明するが、後端に寄せたときとそうでない場合で「安全性に差が生じないとはいえない」という。

(危険防止の対策)N-BOXやタントの後席を後端までスライドさせたときの足元空間は、必要以上の広さになる。実際には膝先に握りコブシ2つ分の余裕があれば、足元空間に不満を感じることはない。このスライド位置なら、後席の後ろ側に衝撃を吸収する空間を確保できる。後席をむやみに後端までスライドさせるのは避けて、追突されたときの安全に配慮したい。

シートベルトが正確に機能しない心配も

(7)ミニバンのリクライニングとオットマン/寝そべるような乗車姿勢は避ける

Lサイズミニバンに装着されるセパレートタイプの2列目シートには、オットマンが備わる。座面の下側からクッションが持ち上がり、ふくらはぎを支えるものだ。リラックスして快適に座れる。

オットマン本来の使い方は、踵が床から離れないように少し持ち上げて、背もたれも少し後方へ倒すものだ。ところが実際には、オットマンは大きく持ち上がり、背もたれもフルにリクライニングできる。つまり寝そべるような姿勢を取れるわけだ。

東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

2列目の乗員が寝そべった座り方をしているときに衝突事故が発生すると、シートベルトが正確に機能しない心配がある。

特に日産エルグランドの2列目シートは、長いスライド機能を装着しながら、シートベルトを背もたれの内部に収めていない。ピラー(柱)から引き出す前席と同じ方式だ。そのために前後スライドの位置によってシートベルトの掛かり方が変わり、背もたれを倒してオットマンも持ち上げると、乗員をほとんど拘束しなくなってしまう。

これらミニバンの取扱説明書を読んでも、「リクライニングで背もたれを大きく寝かせ、オットマンを持ち上げた状態で走行するのは危険」とは書いていない。

(危険防止の対策)停車中に寝そべるのは問題ないが、走行中は避ける。シートベルトを着用していても、衝突時の安全性を阻害するからだ。走行中に2列目の背もたれを倒すとしても、その角度は、3列目に干渉しない程度にとどめる。オットマンの角度も、前述のように踵が床から離れない範囲にする。便利な機能を安全に使っていただきたい。
渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT