駅や電車、訪日客への「情報提供」は何が必要か 英語の案内板があっても見づらいことが多い

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外国人観光客と案内表示器との間で課題となるのが緊急時の情報伝達だ。人身事故や車両故障が発生すると、運転見合わせやダイヤの大幅な乱れにつながる。緊急時には日本人ですら駅や車内にある案内表示器を見ながら右往左往するのに、外国人観光客が情報を的確に把握できるか心配になる。

近年、鉄道会社は緊急時における外国人観光客への情報伝達に力を入れている。JR東日本は昨年12月に列車運行情報を英語で伝達する専用ツイッターアカウントを設置した。JR西日本は駅乗り場案内や緊急時の固定情報を表示する電子ペーパーを活用した可変式掲示板の実験を大阪駅で実施。また、JR四国では昨年12月から普通列車の車内にも列車運行情報QRコードを掲出した。

大阪駅にある可変式掲示板は4カ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)で繰り返し表示される。電子書籍のようにくっきりと表示されることも強みだ。JR四国の列車運行情報QRコードを読み取ると、すぐに外国語の列車運行情報、列車走行位置情報サービスのページが表示された。また、扉付近にQRコードが貼られているため、とても見つけやすい。

ツイッターも万能ではない

緊急時における外国人観光客への情報伝達は向上したが、新サービスだけでは「完璧」とは言えない部分もある。たとえば、可変式掲示板は固定情報の表示がメインとなり、刻々と変化する遅れ時間などの可変情報は従来の案内表示器や駅員が伝える。また、ツイッターは日本人の間では幅広く使われているが、世界中に普及しているとはいえない。IT分野のグローバルエージェンシー「We Are Social」が1月末に発表した世界SNS利用ランキングによると、ツイッターは13位にとどまる。

また、従来からある駅や案内表示器でも「○分遅れ」といった遅延時間は表示されるが、駅ごとに詳細な運行情報や振り替え輸送に関する情報は発信できない。

詳細な情報は車掌による英語放送に頼るしかない。もし、英語放送がなければ私たちが積極的に外国人観光客に声がけすることも大切だと思う。かくいう筆者も海外では現地語でのみ伝えられる情報がわからず、何度も乗客に助けてもらった。片言の英語でもなんとかなるものだ。困った人がいたら声をかけるという心がけこそが最も大切ではないだろうか。

新田 浩之 フリーライター

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にった ひろし / Hiroshi Nitta

1987年兵庫県神戸市生まれ。2013年神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について執筆。2018年にチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」に就任。

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