小売店激減でも「生き残る店」の意外な共通点 ナイキの店舗に学ぶ「行きたくなる」店とは

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ナイキが2018年11月にニューヨーク5番街にオープンした「ナイキ ハウス オブ イノベーション000(NIKE House of Innovation 000)」は、革新的な店舗として話題を集めている。

ここでは、ただスニーカーやウェアを販売するだけではない。そこにスニーカーの部位ごとに色をカスタマイズしたり、専門のスタッフと一対一で相談したりと、個人に合わせた「体験」を取り入れているのだ。一方で、購入時の面倒なやり取りは省略されている。ナイキのアプリで決済するため、レジに並ぶ必要はないのだ。

今後、店舗が生き残っていくためには「体験」がキーワードとなる。「わざわざ行く価値がある」という店舗だけが生き残れる時代になるのである。

「体験」への関心は新たなチャンスを作り出す

ただ、悲観的な話だけではない。「体験」という観点では、地方にも大きな可能性が秘められている。これだけ物流の発達した時代でも、地方の港町に行けば、「この魚が生で食べられるのはここだけ」ということがある。

その地方にしかない食材やイベントがあれば、物欲よりも「体験欲」が旺盛な消費者が、わざわざ足を運ぶことも増えていくかもしれない。例えば、自分で捕まえた魚を料理して食べたり、地域の伝統工芸の職人が手作りで作ったものを何カ月も待って買ったりするといったことは、一層増えるだろう。

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こうした動きは、ネット通販を手がける小さな小売りやメーカーにもチャンスになる。例えば、百貨店の催事コーナーでは、「北海道物産展」などは人気コンテンツの1つだが、こうした物産展をはじめ、都市部に小さなスペースのリアル店舗を期間限定で出店する「ポップアップストア」を活用するのだ。

単にネットで全国販売するだけではなく、ときにこうしたリアルの場を用意して、実際に手に取ったり、試食したりできるといった「体験」を提供する。最近は、こうしたポップアップストアの場所を提供するIT企業もあり、中小規模の企業でも比較的手軽に出店できるようになっている。

こうした変化はわれわれ消費者にとっても悪い話ではない。買い物に関してのムダ、つまり面倒なプロセスを減らしつつ、そこで得られる「体験」を洗練させていくことで、消費者は「買い物の楽しさ」に再び気づくとも言えるだろう。

望月 智之 いつも.副社長

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もちづき ともゆき / Tomoyuki Mochizuki

東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつも.を共同創業。同社はコンサルティング会社として、現在までのべ9000社以上の企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国であるアメリカ・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの第一人者として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、ブランド企業に対するデジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。

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