西武園ゆうえんち「昭和の世界観」で復活なるか USJ再生の森岡氏を招聘、100億円投資の勝算

拡大
縮小

今回のリニューアルについて、森岡氏は「難易度が非常に高いプロジェクト」と不安を隠さない。「現行のブランドはその(設備の)古さや、古くからあるということが、消費者の中で非常にマイナスに評価されている」(同)からだ。

森岡氏は2018年度に49万人だった客数の展望について、詳細を後日発表するとしたうえで「100億円投資して、1割お客さんが増えましたでは回収できない」と述べた(記者撮影)

大手の東京ディズニーランドは2020年4月開業の「美女と野獣」エリアなどに約750億円、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは2020年夏開業の「任天堂」エリアに約600億円と、スケールの大きな投資を足もとで実施し、消費者に継続的なアプローチをかけている。

対する西武園ゆうえんちが、全体のリニューアルに投じるのは100億円。西武HDの後藤社長は、一度に100億円を超える資金投下も選択肢に持っていたようだが、森岡氏は「そういうものをドーンと作って、消費者の頭の中でブランドが選ばれる確率をバシッと変えることが可能な商圏、事業状況にはないと後藤さんに進言した」という。

ターゲットは高齢層ではなく若者?

限られた初期投資の中で重視するのが、従業員のサービス水準だ。リニューアル後の西武園ゆうえんちでは、1960年代という時代設定に合わせた「おせっかいなほど優しい」(森岡氏)姿勢による、独自色の強い接客を計画している。また、所沢という立地も「いろいろな考え方はあるが、西武鉄道が通っているため伸びしろがある」(同)と前向きにとらえる。

西武園ゆうえんちのリニューアルは功を奏するか(2019年5月撮影、写真:西武鉄道)

そのメインターゲットは、1960年代の世界観になつかしさを感じる年配の世代ではなく、若者を想定している。プロジェクトにおける調査の結果、「そういう世界に魅力を感じて、最も来場意向を強く示すのは10代後半から20代の若者。なぜかと掘り下げると、1960年代を幸せと感じるように脳内の回路に刷り込まれていた。若い方は非常に斬新に感じながらも、懐かしいという反応をする」(同)。

低迷していたユニバーサル・スタジオ・ジャパン以上に難易度が高いと、再生請負人・森岡氏自らが語る西武園ゆうえんちの復活。自ら投資規模を最小限にした戦略が奏功するかは、低予算かつ斬新なアトラクションの作り込みに加え、人材育成もカギを握りそうだ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT