東京・神津島が「星空の世界遺産」に挑むワケ 国内2例目、環境配慮型の新しい街おこし

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神津島の海岸から見た星空(写真:神津島村)

東京から大型客船で約12時間。伊豆諸島のほぼ真ん中に浮かぶ神津島(こうづしま)は、八丈島や三宅島などと並ぶ「東京諸島」の1つだ。周囲約22キロメートルで人口はわずか1920人。その小さな島が、新たな街おこしに挑戦している。

切り口は「星空」。最近では長野県阿智村や岡山県浅口市など、星空を売り物にした自治体が増えている。その中で神津島が特徴的なのは、自然環境保護を徹底させる姿勢にある。

「星空保護区」の取得を目指す

神津島が目指すのが「星空保護区」の取得だ。星空保護区は、天文学者や環境学者らで作るNPO国際ダークスカイ協会(本部・アメリカ)による国際的な認定制度。夜空の暗さや屋外照明に厳しい基準があり、「星空版世界遺産」とも称される。欧米を中心に103カ所が認定されており、2018年3月には沖縄県の「西表石垣国立公園」が国内で初めて選定された。

神津島が星空保護区を目指すきっかけは、都が推進する東京宝島事業だった。同事業は東京島しょ地域のブランド化を目指す取り組みで、2017年から始まった。だが、当初は「何が神津島の宝なのか、自分たちではわからなかった」(前田弘村長)。

宝島事業とは別に、神津島では2016年夏ごろから、星空を島以外の人たちにアピールしようとする取り組みが始まっていた。星空ガイドを独自に認定、現在では18人まで増えた。

その中に、ニュージーランドのテカポ湖でガイドをした経験のある人がいた。テカポ湖村は人口300人にもかかわらず、その星空を見に世界中から観光客が訪れる、星空観光のメッカだ。そのテカポ湖が取得していたのが星空保護区だった。「テカポ湖のように星空保護区の取得を目指したらどうか」。そうして、保護区認定に向けた取り組みが始まった。

そこからは早かった。2019年10月に基礎調査を実施。同年12月には島全域を星空公園に指定、屋外照明の明るさや点灯時間の制限などを定めた条例も制定した。現在では今年6月の申請を目指している。

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