EU離脱後もイギリスが「波乱含み」な事情

慶大・庄司教授が語るブレグジット後の焦点

イギリスのEU離脱がとうとう実現するが、ジョンソン首相は今後どのようにイギリスを舵取りしていくのだろうか(写真:AP/アフロ)
イギリスの欧州連合(EU)離脱が1月31日にとうとう実現する。2016年6月の国民投票から3年7カ月、紆余曲折を経ての離脱だ。
もっとも、イギリスはこれからEUとの間で自由貿易協定(FTA)などについて交渉に入る。2020年12月末までの移行期間中は激変緩和措置として現状のEUとの関係が続くが、期限までにFTA交渉で合意できなければ、「合意なき離脱」と同様の状況に陥ることになり、先行きはまだまだ波乱含みだ。
今後の交渉の注目点などについて、EUの法・政策研究の第一人者である慶應義塾大学法務研究科の庄司克宏教授に聞いた。

ジョンソン首相は北アイルランド問題で功績

――イギリスがEU離脱でようやく決着します。

メイ首相の離脱協定案は2019年にイギリス議会で3度否決され、立ち往生した。そもそも2016年6月の国民投票で「離脱か残留か」しか問わず、どんな離脱かを具体的に示さなかったことが間違いだった。いわばキャメロン元首相の「オウンゴール」。メイ前首相も総選挙で敗北し、オウンゴールが2回続いた形だ。

そういう中で、ジョンソン氏ら与党・保守党の強硬離脱派や北アイルランドの民主統一党(DUP)の反対で離脱協定案の議会承認が得られなかった。

ではなぜジョンソン首相になって離脱協定案で合意できたのか。功績の半分は「合意なき離脱」に反対した超党派議員によるものだ。保守党や労働党の重鎮らが2019年10月にかけて合意なき離脱を封じる法案を成立させたからこそ、ジョンソン氏は10月末までの合意か離脱延長を決断するしかなかった。

ジョンソン氏の功績は、北アイルランド問題の解決にある。今後のFTAと切り離して、北アイルランドだけを特別扱いする形で事実上、EUの関税同盟と物品規制内に残す決断をした。その雛型はメイ前首相の離脱方針「チェッカーズプラン」にあったのだが、これを決断したことで国境検問を設けなくてよいことになった。イギリスの民主政治が何とか頑張ったという評価もできなくはない。

――2019年12月の総選挙で保守党が圧勝した要因は何だったのですか。

よくも悪くも離脱問題の決着をつけ、北アイルランド問題も解決させたことだ。決められない議会を脱するチャンスとして、国民がジョンソン氏に託した。労働党並みの社会政策を提供することで労働党の地盤切り崩しにも成功した。選挙制度が比例代表制ではなく、小選挙区制であることも影響した。

労働党のコービン党首は野党連立政権をつくるチャンスもあったが、「自分が首相でなければ嫌だ」と言い、連立政権の可能性を潰した。そして勝算のないまま総選挙に同意し、大敗してしまった。

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