突然キレる父親に40年心を縛られた男性の苦悩 「毒親の呪い」は無理して克服しなくてもいい

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「それでも正社員として40歳まで勤めていました。上司がぼくを育ててくれようとしてくれたのですが、うまくいかなかったのです。言われたことはできるのに、それ以上のことができない。年齢が上がってくると、自分の仕事だけやっていればいいというわけにはいきませんよね? 若い社員が入ってくれば、リーダー的に動くことも必要になってくる。でも、ぼくにはそれができなかった。全部、失敗する。

おそらく『完璧な人間になってはいけない』という呪いのようなものがあるのだと思います。父親が成功者としてお金を稼いでくることに対する無意識の反発のようなものでしょうか。上司が親身に指導してくれても、それに応えることができず、最後には『おまえはダメだ』という評価になってしまう。

それで30歳ぐらいから翻訳とか通訳の勉強を始めました。方向転換しなくちゃいけないと思ったからです。エンジニアとしては先が見えていましたから。最初は技術系でも英語が必要な部署にいたのですが、それも厳しくなって、結局、辞めざるをえなくなり、非正規で英語を使える仕事をしているというわけです」

どうすれば「普通」になれる?

飯田さんと初めて会ったとき、カバンから取り出したのが、前述したスーザン・フォワードの『毒になる親 一生苦しむ子供』だった。購入したのは10年ほど前だそうだが、内容はあまり読んでいないという。なぜなら、親がどういう人間であるかということより、自分の状況をどうやったら克服し、改善できるのかに関心があったからだ。

「ずっと以前からアダルトチルドレン関連の本は読んでいました。ダン・カイリーの『ピーターパン・シンドローム』などですね。ただ、本には事例は載っているものの、その改善方法や答えがはっきりとは書かれていなかった。

『自分だけじゃない』とわかることで役に立つことも多少はありましたが、安堵することはなく、不十分でした。『普通』の社会人になるためにはどうしたらいいのか、答えを探し、『愛があるから真っ向勝負』というスパルタ式な教育論の本も読みました。

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