日銀の企業金融支援措置の撤廃、必要性が失せれば緊急的措置は停止が妥当
経済を語るに際して情緒的すぎるのは禁物だが、経済への介入が行き過ぎたり、あるいは経済政策と社会政策とが混同されることがあると、実体経済や市場の背骨が歪む。
米国投資銀行のリーマン・ブラザーズが経営破綻したのは2008年9月15日のことだった。その直後から、わが国でも金融市場が大混乱を来し、企業金融には一挙に信用収縮が広がった。折から年越え資金確保という企業金融のヤマ場を迎え、コマーシャルペーパー(CP)市場では金利が激しくハネ上がった。社債市場も同様の状況を呈した。
この金利の急上昇は、企業にとって単なる資金コスト増をもたらしたのではない。事実上、多くの企業の資金調達が不可能になった。そこでこの危機的な状況を緩和するため日銀が実施したのが、CP、社債の買い上げ、企業金融支援特別オペ、日銀適格担保要件の緩和などの一連の企業金融円滑化措置だった。
出口論との混同は禁物
リーマンショックから1年が経過した頃、日銀は一連の措置の停止を検討し始めた。激しい信用収縮に対峙した前線からの撤収である。そして日銀は10月30日の政策決定会合において、一連の措置のうちCP、社債の買い入れを今年12月末をもって停止することを決定した。
結論を急ぐと、この日銀の判断を基本的に支持したい。
日銀が一連の措置を停止することを検討し始めた背景には、大手企業層の賃金繰り改善と金融市場の安定化がある。たとえば08年11~12月には1・04%にも拡大していたCPと短期国債の流通利回り格差(スプレッド)はしだいに縮小。今年9月には0・09%とこの4年ほどの間では最低レベル付近にまで収斂した。さらには短期国債利回りと逆転するまでになった。CP金利が低下したからである。