自衛隊が「領海侵犯やテロ」に対抗しにくい根因 中東派遣に見えるグレーゾーン事態への難しさ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(制作:TOKYO MX『モーニングCROSS』)

しかし、日本からペルシャ湾までの距離は約7000kmもあり、現地で活動しなければ、詳細な情報を把握することは難しいだろう。何か問題が起きてから慌てて派遣を準備してからでは遅い。同地域において現に紛争が発生しているわけではないことを考えれば、まずは平時対応である「調査・研究」で自衛隊を派遣することは妥当と言えるだろう。現地で日本に関係する船舶が攻撃を受けた場合は、直ちに自衛隊法が規定する海上警備行動を発令し、船舶の安全確保に当たることができる。なお、海上警備行動の発令に関しても国会の承認は不要だ。

問題は武器使用がどこまで認められるか

問題は、仮に海上警備行動に移行したとしても、武器の使用に限界がある点である。

① わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態(「武力攻撃事態」)
② わが国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態(「武力攻撃切迫事態」)
③ 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態(「存立危機事態」)

【2020年1月28日15時10分追記】初出時、上記②の表記に誤りがあったため、上記のように修正しました。

これらが発生した場合には、最高指揮官である内閣総理大臣が、自衛隊に対して防衛出動を命ずることができる(自衛隊法76条)。そして、いったん防衛出動が発令されれば、自衛隊は持てる力の総てを投じて自衛権に基づく武力行使を行うことができるのである(同法88条)。

しかし、ここでいう「武力攻撃」とは、「我が国に対する外部からの組織的・計画的な武力の行使」(事態対処法2条)をいい、また武力攻撃の主体は「国または国に準ずる者」とされているため、今回派遣された海上自衛隊の護衛艦や哨戒機に対してテロリストや海賊などによる攻撃が加えられた場合は武力攻撃に該当しないのである。

こうした状況に対しては、第一義的には警察や海上保安庁が治安維持活動として対処するのだが、警察や海上保安庁で対応しきれない場合には、自衛隊が治安出動もしくは海上警備行動により対処することになる。

次ページ「武力行使」と「武器の使用」の間にある明確な線
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事