ビジネスモデルとコース料理の意外な共通点 熱心なビジネスパーソンが陥る「わな」の正体

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コース料理には出てくる順番があります。例えば、フランス料理では、「前菜」「スープ」「魚料理」「口直し」「肉料理」「デザート」「コーヒー」と並びますが、これは時間をかけておいしく食べるための工夫です。

同様に、ビジネスモデルをつくるのにも順番があります。私の場合、その手順は「分析」「発想」「試作」「検証」としています。

①分析……まずアイディア発想に先立ち、調査して分析します。大きな問題については、細かく砕いて整理します。「分析」によって事実を整理できれば、何が大切なのかも明らかになってきます。
②発想……整理した事実を基に創造的に「飛躍」させて発想します。
③試作……「発想」によってひらめいた「考え」を形にしていきます。形にしていくことで自身の考えも、より具体的になります。
④検証……「試作」を作り市場に受け入れられるかどうかを実際に確かめます。検証結果は、次のサイクルの「分析」における新しい起点となります。

このサイクルを小さく、賢く、失敗を恐れずに何度も回すことで、ビジネスモデルづくりが実現します。

ビジネスモデルの創造サイクル

3つのつくり方

ここでは、ビジネスモデルのつくり方を、文化や流儀が異なる3つのコースとして紹介します。以下、それぞれのアプローチが、どのような考え方に基づき、何を分析して、どのように発想し、どんな形にして、どうやって確かめるのかを説明します。これがわかれば、読者の皆さんも、どのコースを選ぶべきかが判断できるはずです。

井上達彦(いのうえ たつひこ)/横浜国立大学経営学部卒業、神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)取得。2008年より現職。早稲田大学産学官研究推進センター副センター長・インキュベーション推進室長などを歴任。研究分野は、ビジネスシステム、ビジネスモデル・デザイン、経営組織論、経営戦略論。主な著書に『模倣の経営学』『ブラックスワンの経営学』などがある(写真:梅谷秀司)

・戦略分析アプローチ

1つ目のアプローチは、戦略コンサルタントのノウハウを体系化したもので、数値で示せるようなデータとロジックが重んじられます。まず、市場の規模は大きいのか小さいのか、成長率はどうなのか、共創の環境は厳しいのかといった外部環境の分析を行い、ビジネスの機会や脅威を洗い出していきます。

 

次に、自社が持っている「ヒト、モノ、カネ、情報」といった経営資源の分析を行い、内部資源の強みと弱みを把握します。最後に、これらを掛け合わせて発想するわけです。

例えば、「自社の強みを生かしつつ、市場の機会を最大限に活用するにはどうすればよいか」という具合です。星野リゾートのビジネスモデルは、このような戦略的な分析を基に生み出されてきました(『星野リゾートの教科書』日経BP社)。

次ページこのアプローチの最大の特徴
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