ビジネスモデルとコース料理の意外な共通点 熱心なビジネスパーソンが陥る「わな」の正体
このアプローチの最大の特徴は、分析に重きを置く点で、データによる裏付けがない発想には価値がありません。非論理的で突飛な発想も望まれません。発表資料には、自らのアイデアを裏付けるための数値やグラフが並びます。ビジネスモデルを形にするときは、事業コンセプト(誰に、何を、いかに)という点から描き出され、新規事業提案の会議などで、その妥当性が確かめられるのです。
分析対象は、「困りごと」を抱えた顧客
・デザイン思考アプローチ
2つ目は、近年注目を浴びている、デザイン思考のアプローチです。これは、戦略分析アプローチの弱点を克服するために生まれたもので、それを補完するものです。数字で示されるデータよりも人間性に目を向け、ビジネスモデルをつくるときに顧客との共感を大切にします。彼らがどのような「困りごと」を持っているのか、それを言い表す言葉が大切とされるのです。
このアプローチを生み出したのは、デザインコンサルタントです。一般的に、デザインといえば、製品を美しく、あるいは使いやすくするなど、意匠設計に関わるものだと理解されがちですが、身近な生活から社会システムのデザインまで、ありとあらゆるものに適用できます。
このアプローチで活用されるのが、現場の観察やインタビューです。現地に潜入したフィールドワーカーとしての調査者は、異文化世界の人たちを理解するために、彼らの日常的な行動様式を詳細に記述します。外部から理性的な理解をするのではなく、当事者の立場からの内面的な理解ができるように心がけるのです。
例えばJINSを創業した田中仁さんは、観察をきっかけにビジネスモデルをつくりました。2000年、友人と韓国の東大門市場に行ったときに、日本だと眼鏡は3万円ぐらいするメガネがレンズも含めて一式3000円程度で販売されていたのです。田中さん自身は、視力がよくて眼鏡を使わないのですが、友人が驚いている様子を観察して商機を見いだしました。
分析対象は、「困りごと」を抱えた顧客です。顧客の立場で、顧客の世界に入り込んでビジネスモデルづくりに不可欠なインサイトを得ます。ここから得られたインサイトは、アレックス・オスターワルダーさんとイヴ・ピニュールさんが考案したビジネスモデル・キャンバス(BMC)といったフレームワークに落とし込まれます。
BMCについては詳しく紹介しませんが、これは、顧客や提案価値などを枠の中に言葉を記入してビジネスモデルをデザインするための枠組みです。紙の上でも形にできれば、ストーリーとして語りかけ、顧客や投資家などにアイデアの筋のよさを確かめることができます。
観察やインタビューから顧客のニーズを読み取り、それを言葉にして示すわけですから、その言葉が顧客のニーズの本質をうまく捉えられているかが問われます。
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