京都の「赤字」鉄道路線に残っていた再生の糸口 高速バス最大手が未経験分野に乗り出したワケ

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ウィラーの寒竹聖一取締役(写真:NHK大阪放送局)

真山:鉄道でいちばん大変なことは何ですか。

寒竹:バスの場合は根本から路線を考えられますが、鉄道は自由に線路が引けないため、決められたところでどれだけ収益を上げていくかということです。路線自身の価値を上げ、その路線があることにより周りを潤わせる、幅広い視野を持って戦略を立てることが必要になってきます。

真山:事業を受け継いだとき、すでに赤字が続いていただけでなく、そもそも経験もない分野に進出してもうまくいくわけがないと、多くの人は思うでしょう。勝算はありましたか?

上下分離が大きなポイント

寒竹:勝算はありました。鉄道自体に町を活性化させるための可能性があることと、上下分離という新たなスキームを京都府が決断したことです。

これまではすべて自社でやっていたのに対し、車両も含めた基盤を交通インフラと捉えたうえで、民に交通ネットワーク自体の運営を任せたのです。民の力を必要とし鉄道を活性化させることが、まさに交通が経済を活性化するということです。京都府がそのようなスキームを作ることにより交通が町を作るという、この2つが合致しながらも、仕組みが上下分離になっている鉄道事業は、おそらく日本で最初のケースだと思います。

渡邊 :上下分離とは具体的にどういうものですか。

寒竹:事業の運営を「上」、インフラに当たる基盤を「下」と分けて、「下」を行政と民間が共同出資する「第三セクター」、あるいは行政が維持したうえで、鉄道会社が「上」を担当するということです。

もともとは高速バス事業で大きく成長した会社だ(写真:NHK大阪放送局)

私の持論ですが、公共交通手段は上下分離が基本だと考えています。例えば、航空業界では、空はみんなのもので、空港は国のものですよね。船も似たような形があります。

われわれがなりわいとしている高速バスも同じで、道路は行政のもの。例えば、OCAT(大阪シティエアターミナル)やバスタ新宿といった高速バスターミナルの事業主体は民間企業ではありません。つまり、すべてを自前でやろうとすると、それはおそらく運賃に跳ね返ってきます。

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