2兆ドルを運用、投資のプロが語る今年のテーマ 米国株になお魅力、日本や新興国に妙味も

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「脱グローバル化」は今や世界的な流れであり、ブレグジットや日韓関係、アメリカとヨーロッパの対立にも表れている。投資家はそうした時代の変化に対応するため、ポートフォリオをグローバルに分散し、貿易依存度の高いポジションのリスクを軽減する必要がある。

投資先としては、内需依存度の高い国や企業に加え、設備投資よりも個人消費に関連した企業に妙味がある。個人消費は貿易摩擦に対する耐性が比較的高いためだ。

新たにアメリカとイランの対立激化も加わった。言えることは、アメリカの有権者は全般的に、中東での戦争を支持してはいないということだ。トランプ大統領は現段階でイランとの対立をエスカレートさせたいとは考えていない。また、世界経済は以前に比べて原油価格の影響を受けにくくなっている。

背景にはシェール革命があり、アメリカでの原油増産で原油価格の上昇が抑制されている。2020年の原油価格は供給要因によってむしろ低下すると考えている。トランプ氏は大統領選をにらみ、イランの核開発に絡んだ新たなディール戦術を仕掛けていると考えられる。その成果がどうあれ、それに投資を左右されるのは賢明ではない。

アメリカ株は依然として魅力的だ

投資家にとってより重要なのは世界経済の成長であり、企業収益の動向だ。世界の中央銀行が金融緩和的な姿勢を続けることで、株式にはポジティブな影響が見込まれる。確かに、アメリカ株はPER(株価収益率)から見ればもはや割安とはいえない。

しかし、アメリカ国債のリターンと比較すればなお魅力的だ。年金基金などはリターンを確保するため株式に投資するしかない状況にある。インフレは抑制され、FRBは現在の低い政策金利を維持する姿勢を示している。トランプ大統領もあらゆる手段を使って選挙前の景気拡大を図ろうとするだろう。2020年のアメリカの景気後退はないと考えており、アメリカ株は企業収益の増大とPERの上昇、増配により、S&P500ベースで10%近いリターンが見込めると予想している。

株式ではアメリカのほか、日本や新興国に比較的妙味がある。逆に、ヨーロッパ株はアンダーウェートしている。ヨーロッパは輸出依存度が高く、米中貿易摩擦の影響が相対的に大きい。ブレグジットも(通商交渉で)不確実性を残す。また、ヨーロッパは金融緩和の余地が小さく、財政出動にも政治的に慎重であることが理由だ。債券では先進国の国債よりもドル建て新興国国債に妙味がある。

焦点となる投資テーマとしては、まず「デジタル革命」。5Gや人工知能が急拡大するデータと結び付き、今後10年にわたって重要なイノベーションを巻き起こす。次に「遺伝子治療」。バイオ医療や医薬品の枠組みを根底から覆すポテンシャルを持っている。そして、「水のインフラ投資」。中国とインドは世界人口の約35%を占めるが、淡水資源へのアクセスは全体の10%を下回る。世界は水需給の不均衡という深刻な問題に直面しており、水資源探査や配水、水処理などのインフラ投資は長期的にGDPを上回る成長が見込まれる。

ESGなどのサステイナブル投資も非常に大きなトレンドだ。各国政府はサステイナブル投資の促進に向けて規制を強化しており、環境危機の段階から環境保護策実行の段階へと移行しつつある。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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