2兆ドルを運用、投資のプロが語る今年のテーマ 米国株になお魅力、日本や新興国に妙味も

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ニューヨーク株式市場はダウ平均が高値を更新している。写真は2019年11月4日(写真:ZUMA Press/アフロ)
2020年の金融市場はアメリカとイランの報復合戦により波乱の幕開けとなった。しかし、足元では落ち着きを見せ、アメリカ株は史上最高値を再び更新している。日本株も昨年秋からの回復トレンドは崩れていない。
2019年は米中貿易摩擦に翻弄される1年だったが、終わってみれば世界的に株価は大きく上昇した。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)による3度の予防的利下げや欧州中央銀行(ECB)による量的金融緩和再開、そして米中摩擦の改善期待が2019年の後半以降の市場ムード好転をもたらしたといえる。
2020年はアメリカ大統領選という大イベントを控えるほか、米中摩擦や中東情勢、イギリスとEUの通商交渉など多くの波乱要因を抱えている。海外の有力投資家は今年のグローバルな投資環境や有望市場をどのように考えているのか。運用資産規模で約2兆ドルを運用するUBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ハフェルCIO(最高投資責任者)に聞いた。

大統領選の結果に賭けるのは早すぎる

2020年の投資を考える場合、3つのトピックスに焦点を置いている。第1に、11月のアメリカ大統領選が経済政策や税制にどのような影響を与えるか。第2に、第1段階の合意に至った米中貿易交渉が今後どのような展開をたどるか。第3に、財政・金融政策による景気刺激策が世界各国でどのような違いを見せるかだ。

大統領選について世界の投資家の多くが心配しているのは、民主党候補が勝利した場合の影響だ。現在、予備選初戦のアイオワ州(2月3日の党員集会)においてはサンダース上院議員がトップ争いを演じているが、投資家は同氏の主張する税政策(大幅増税)がビジネス界や個人富裕層にとって建設的ではないと考えている。

マーク・ハフェル(Mark Haefele)/アメリカのプリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。ソニック・キャピタルなどを経て、2011年にUBS入社。現在、全世界の運用資産約2兆ドルの投資戦略を統括する(写真:今井康一)

私は投資家に次のように助言している。1つは、大統領選の結果に賭けるのは早すぎるということ。予備選前半では、各候補は戦略的に極端な政策を主張しがちだが、後半になると中道にシフトするものだ。しかも、選挙は接戦が多いため、結果を予測するのは難しい。

2つ目は、大統領だけで政策を推進するのは難しく、議会の支持が必要だということ。(大統領選と同時に実施される)上下両院の議会選挙の結果はより予測が難しい。つまり、11月の選挙が終わるまで、どんな政策が実現するかは読めないということだ。したがって、今は大統領選を前提に投資するのは賢明ではない。

米中貿易摩擦は部分的な合意で一定の改善を見せているが、両国の長期的な主張は変わらず、大統領選が終わっても、民主党候補が大統領に選出されても、両国が本格的に歩み寄る余地は小さいと考えている。

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