「ハスラー」「タフト」がライバルといえない理由 異なる狙いで開発されたそれぞれの特徴とは

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会見で当時の鈴木修会長は、「全国の販売店をまわっていると『会長、ジムニーのような感じのクルマを出してください』と言われることが多かった。ジムニーのモデルチェンジはだいぶ先になりそうだったので、別のクルマを考えるよう、私が直接(企画と開発部門に)指示して、このクルマが生まれることになった」と誕生秘話を披露した。

2013年12月24日に発表された「初代ハスラー」(写真:スズキ)

これは決して、鈴木会長の自慢話ではなく、草の根活動で集めた現場の声をしっかり商品開発につなげていることを明かしているにすぎない。

そうした草の根マーケティングの現場を筆者は2019年秋、実際に体験した。ハンドル式電動車いす(セニアカー)の取材で、スズキ本社営業部の関係者らと長野県内のスズキ販売店や直系ディーラーでの営業活動に同行した。

その際、軽自動車や登録車を含めて、スズキが日頃からどのようにして市場の声を聞き、各地域で情報を集約したうえで本社と協議するのか、そのプロセスを肌感覚で理解できた。

こうしたスズキ独自のマーケティング戦略によって、ハスラーはジムニーのようなラダーフレームによる本格的な四輪駆動車ではなく、アクティブに遊びを楽しむファミリー層にアプローチするクルマとすることで、新たな市場をスズキ自らが作り上げたのだと感じた。

欠点だった乗り心地を改善

第2世代となる新型ハスラーでは、初代ハスラーの世界感を継承し、さらなる楽しさを訴求している。

外観をパッと見ただけでは初代と大差ないように感じるが、よく見るとボディ形状全体がよりスクエア(四角い箱)となり、室内スペースも拡大している。「外観のデザインは初代を継承している分、車内に入った際の驚きと楽しさを演出した。若手デザイナーのスケッチを思い切って採用した」とは、デザイン部門幹部の話だ。

クルマ全体として見て初代に比べての大きな変化は、乗り心地とハンドリング性能の大幅な向上である。

ハスラーの走りについては、全国各地から「乗り心地をもっとよくしてほしい。とくに後席は下から突き上げが強くて乗っていて辛い」という声が多かったと、スズキ本社営業部関係者が打ち明けてくれた。

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