氷河期世代「6つの図解」で読む本当に正しい姿 問題をあおるより、冷静で着実な支援が必要だ

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では、そのニートは現在、どんな生活を送っているのか。氷河期世代のニートの世帯構成と平均世帯年収を見たのが、上図5だ。ニートの約4割は単身世帯、その世帯年収は100万円未満が66%を占める。ちなみに、単身世帯のニートの収入の約6割は社会保障給付が占めており、障害年金などではないかと考えられている。

氷河期世代のニートの約6割は、親と同居している。親がまだ働いているため、世帯年収は高めだ。だが将来、親のリタイアや死亡の後には、単身世帯と同様に生活が困窮化することが予想される。

「生活保護費30兆円増」の週刊誌報道は本当か

そして最後に、氷河期世代が将来、生活保護を受給するリスクを見たのが下図6だ。一部の週刊誌は「氷河期世代によって生活保護費は30兆円増える!」と煽動的に報じている。現在の生活保護費は年間約4兆円で、国の一般会計全体でも約100兆円だ。30兆円増が本当なら、極めて深刻な事態といわざるをえない。だが、これにはカラクリがある。

この30兆円増というのは、氷河期世代が平均余命まで生きたときの累計の数字だ。NIRA総合研究開発機構は2008年、氷河期世代の潜在的な生活保護受給者を約78万人と推計する報告書を公表したが、ここで示された生活保護費の推定増加額も、平均余命まで生きたときの累計額20兆円弱だった。これを年間の金額と考えれば、大きく考えを誤ることになる。

図6のように、生活保護受給者数は2019年9月段階で207万人。NIRA総合研究開発機構の推計する78万人は、その約4割にすぎず、仮にこの78万人をまるまる現在の生活保護受給者に上乗せすると、生活保護費年4兆円が5.5兆円になる程度だ。生活保護を受給する世帯の55%は高齢者世帯であり、実際には、氷河期世代が高齢者になって生活保護を受給する際には、人口規模の大きい団塊世代と入れ替わる形になるだろう。そのため、生活保護費はそこまで増えるかは不明だ。

このように氷河期世代への支援では、過度に悲観的になる必要はないだろう。ただ、長年の景気拡大により自力で正社員転換できる人はすでにあらかた終えた一方で、取り残された人たちの多くはメンタル面などに何らかの課題を抱えていることが取材で明らかになっている。

『週刊東洋経済』1月25日号(1月20日発売)の特集は「『氷河期』を救え!」です。
野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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