カローラより小さかった「ポルシェ911」の魅力 衝突安全ボディで大型化した今ではありえない

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メーカーは市場のニーズにも応えなければならないが、サイズに対する市場のニーズもまた「大きい方」へ引っ張る力になっている。

同クラスを乗り継ぐにしても、上位クラスに移行するにしても、ユーザーの多くは「現在より立派で快適なクルマを求める人が多い」ことは調査でもでているし、そうだろうことは容易に想像もつく。

そしてもうひとつ……人々の身長が大きくなっているという事実も無視できない。

多くの国での平均身長は「10年に1cm伸びている」とされるが、ドイツ人男性の現在の平均身長は182cm。70年前のデータでは175cmなのでピタリと合っている。日本男性は現在171cmだが、僕が20才の頃、つまり60年前の平均身長は164cmだったと記憶している。

そんなことで、クルマの大型化は「世の流れに沿ったもの」と言えるのだろうが、そろそろ限界に来ていることも確かだろう。

年齢の壁に比例するサイズの壁

僕は今、GOLF GTI Perfomanceに乗っている。

ほんとうは、人生最後の1台(になるかもしれない)は911にしたかったのだが、サイズの壁を乗り越える勇気と自信がなかった。

パワーやスピードは自分の意志でどうにでもコントロールできるが、いろいろな意味での視力が衰えた今、サイズの壁は越えられなかった。

ちなみに最新の911は4519×1852(含むミラーでは2024 )×1300mm。このサイズ、走っている時は問題ないし、「連続したタイトなコーナーを攻めろ」と言われれば喜んで攻める。

それなのに躊躇するのは、旧い規格のままの幅の狭い駐車場が未だ多く存在するから。高齢になりバックが下手になったことと相まって、ここが911の選択を思いとどまらせたいちばんの理由だ。

では、少し旧い911にすれば?……という話しも出てくるが、高齢者の僕は、できるだけ「最新の運転支援システム」がほしい。なので、買うなら最新のモデルしか選択肢はない。

もしも、964と同じような(長さは4300mm以下、幅は1800mm以下ならOK)コンパクトな911がデビューしたら、僕はすぐディーラーに直行する。

ちなみに、僕が乗っていた964は今も健在。僕からバトンを受けてくれた方が、とてもいいコンディションをキープしてくれている。

元日産の技術者……R32型GT-Rから始まり、R33型、R34型の開発で多くの接触があった方である。今もいいコンディションとわかっているのは、その方が、数年前、僕に元愛車のステアリングを握らせてくれたからだ。

こんな原稿を書いていると、また964のステアリングを握りたくなる。近いうちに連絡して「おねだり」してみようかと思っている。

(文:岡崎宏司/自動車ジャーナリスト)

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