カローラより小さかった「ポルシェ911」の魅力 衝突安全ボディで大型化した今ではありえない

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911は、大きく外観イメージを変えることは許されないクルマだが、ディテールは美しくなり、明らかに新しい時代の911へと姿を変えていた。パーツの80%は新設計され、ボディもフルモノコック化された。

僕がいちばん嬉しかったのは「見た目」のモダン化だったが、もうひとつはボディサイズがコンパクトなままだったこと。そう、964のスリーサイズは4245×1660×1310mm。ほぼ同時期(1991年)に誕生した7代目カローラ(4270×1685×1380mm)より小さい。

当然、取り回しはいい。加えて、小柄で軽量であれば、スポーツカーとしての動質にも少なからぬプラスを生む。

911のルーフ形状は高速でのリフトには不利で、事実、160km/h以上では、誰もが実感できるほどのリフトを招いた。高速になるにつれて接地感はどんどん甘くなり、ドライバーを不安にする。感度のいい人なら120km/h辺りから不安を覚えただろう。

それを抑えるため、964以前の911はリアに固定スポイラーを取り付けていたが、僕はそれが大嫌いだった。しかし、964では80km/h以上で自動的に作動する格納式電動スポイラーが組み込まれた。これも964を買う大きな動機のひとつになった。

「スーツも似合うスポーツカー」の名にたがわぬ快適さ

少しそれたが、本題のサイズの話しに戻ろう。

カローラより小さな964だが、コクピットは十分快適だった。当時から、911は「スーツも似合うスポーツカー」と呼ばれていたが、その通りだった。家内と共に、ドレスアップしてパーティに出かけるようなときにもなんの問題もなかった。

家内も911の運転をとても楽しんでいた。当時はデイムラーダブルシックスも持っていたが、家内はほぼ911しか運転しなかった。

964はどこに行っても容易に駐車できることがありがたかった。カローラ以下のサイズとなれば、とうぜんそういうことになるが、日本の駐車事情下では大きな魅力だった。

しかし、1990年代に入ると、衝突安全性能の引き上げが重要な課題になり、「衝突安全ボディ」の採用が急ピッチで進み始めた。

衝突安全ボディに対する取り組みは、前後からと側面からの衝撃を吸収緩和するクラッシャブルゾーンの確保がまずは基本になる。

素材技術や構造技術もどんどん開発され進化はしたものの、やはり、クラッシャブルゾーンの確保が基本であることに変わりはない。

その結果、クルマのサイズは大きくせざるを得なくなった。

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