韓国の街並みに見えた「青年失業地獄」の断面 過度な学歴社会が、就職先選びにも影響する

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また、「修繕屋」という商売も韓国ではあちこちで見かける。私もコートのボタンが取れてしまったとき、近所の修繕屋に走った。アジュンマ(おばさん)に見せると、お安い御用とばかりに、すぐに取り付けてくれた。値段は3000ウォン。ここでは、衣類の簡単な修理もすぐにやってくれた。誰でもすぐに商売が始められる小さな店が多いのは韓国の特徴の1つでもある。同じ経済水準の国に比べても倍ぐらいの多さだという。

前述したような「安い資金での起業」「女性や高齢者の働き口が限られている」などの事情があるが、「修繕屋」があちこちに存在する理由は、もう1つあるのではないか。韓国では財閥や大企業の支配力が強すぎて、中小企業が育たない風土がある。

財閥や大手が強く、中小企業が育たない

例えば、韓国のコンビニは「4強」と呼ばれる大手4社系列の店がほとんどを占める。この系列のコンビニで商売を始めることは、ある意味、ノウハウや資金の一部を提供してもらえるので、魅力ではある。

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他方、一度でもこの系列で商売を始めれば、途中で簡単にはやめられない。契約年数を満了しないでやめようとすれば違約金を取られるという。好立地で商売をしていれば、すぐに大手がやってきて競業店舗を作られて、潰されるケースもあるという。

だから、どこに行っても、同じ名前のコンビニがあちこちにある。韓国では地方の特色が少ないといわれる理由の1つがここにある。もちろん、働いているのは修繕屋と同じ小商工人なのだが、修繕屋の場合は大企業のフランチャイズという話は聞いたことがない。

だからまあ、大変な労働条件という点は変わらないが、コンビニに比べればいくらか気楽にできる商売とも言えるのかもしれない。ただ、「誰もがなりたい職業」ではないことも、また悲しい現実なのだ。

牧野 愛博 朝日新聞編集委員

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まきの よしひろ / Yoshihiro Makino

朝日新聞編集委員、1965年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大阪商船三井船舶(現・商船三井)に入社。1991年、朝日新聞社入社。瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金(NED)客員研究員、ソウル支局長などを経て現職。『北朝鮮秘録 軍・経済・世襲権力の内幕』、『ルポ 絶望の韓国』(ともに文春新書)、『戦争前夜 米朝交渉から見えた日本有事』(文藝春秋)、『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』(講談社+α新書)、『ルポ「断絶」の日韓』、『北朝鮮核危機!全内幕』(ともに朝日新書)、『ルポ 金正恩とトランプ』(朝日新聞出版)など著書多数。

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