先日、日本でもプレイステーション4が発売されたが、PS4はクラウド型サービスを基礎として機能が設計されている。PS4を通じて新たな利用者が流入し、SENやPlay Memories Onlineはサービスの利用者数が爆発的に増えている。これによってエンジニアの注目度も高まり、他品種のガジェットを作る開発部隊から新しいアイディアが出始めている。もちろん、中には下らないものも多数あるが、そうしたものも含め、アレだ、コレだとたくさんの提案が出てきた。このことが重要だ。
多くの通信事業者から引き合い
――様々な戦略がつながっていく予感もあるが、肝心のXperiaが売れなければ、絵に描いた餅だ。中国最大の中国移動がTD-LTEサービス開始時に、上位端末としてソニー製品を前面に出し始めたが、北米ではまだシェア4位のT-Mobileからしか上位モデルのXperia Zシリーズが販売されていない。
中国移動だけでなく他社からの引き合いもある。米国も、もともとソニーエリクソン時代にAT&Tから端末を出し、最近、T-Mobileからも発売した。上位製品の引き合いも米国の全携帯電話事業者からある。
我々としては、製品として作り込んだものを提供し、それがどのような価値を持つものかを伝えていくつもりだ。ただ、どんなにハードウェアで差異化できたとしても、マーケティング投資で大きなノイズが作れる会社がいくつか存在している。その中で”作り込み”だけでビジネスを伸ばすのは難しいが、まずは最上位モデルを魅力ある製品に仕上げる。そこをきちんと作り込めば、普及機種も含めてXperiaを”買いたい”と思える商品へと底上げできると考えている。
<インタビューを終えて>
競争力のあるスマートフォンの開発と、ネットワークサービス基盤の構築。ソニーは、このふたつの課題に一定の目処をつけてきた。その次の仕掛けとして力を入れているのが、インタビューでも触れたウェアラブル機器向けのサービス、アプリケーション基盤を作ることだ。
スマートフォン市場でトップシェアを走るサムスンは、Galaxy S5に心拍計や指紋認証といったセンサーを内蔵させるとともに、スマートウォッチのGalaxy Gearシリーズを拡充してきた。ウェアラブル機器投入の噂が絶えないアップルはiPhone 5Sに、内蔵センサーのデータ履歴を省電力に記録・管理する「M7」という補助プロセッサを搭載しており、これも利用者の行動履歴を記録、分析する基盤になりうる。
同様の動きは今後、他のスマートフォンメーカーにも拡がっていくだろう。活用の幅はまだ拡がっていないが、サムスンも同様の補助プロセッサ機能を組み込んでいる。加速度センサー、ジャイロセンサー、電子コンパスなどの情報だけではない。スマートフォンで収集できる情報は実に多い。スケジュール管理とGPSデータ、SNSへのアクセスを照合すれば、いつどこで何をしていたかを類推でき、写真撮影や音楽、映像を愉しんだ時間、あるいは買い物をした時間や明細などと付き合わせれば、人の行動を正確に把握できる。
冒頭で述べたように、活動履歴を集め、データの分析、表示などを行うプラットフォームには、まだ業界標準がない。 ”ウェアラブルのプラットフォーム基盤を作る”というソニーのコンセプトそのものは、間違っていないように思える。しかし、少しばかり早くコンセプトを打ち出したからといって勝ち組となれるわけではない。スマートフォンへの投資をグループ全体の利益へとつなげるには、まだ多くのハードルがある。
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ほんだ まさかず / Masakazu Honda
IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。
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