子どもの虐待による「社会的コスト」は甚大だ

児童虐待を「お金」で可視化してみると…

児童虐待の影響をデータサイエンスの分野から解説します(写真:anna_humster/PIXTA)

児童虐待を解決するには何が必要なのか?

私は児童虐待の研究をしています。分野は社会福祉学なのですが、ミクロ(個人)、メゾ(地域)、マクロ(政策)と分かれていまして、私はマクロを中心にしています。これは経済学のマクロとも重なる部分も多く、それらの手法やとくにデータサイエンスを使って社会福祉の問題を「見える化」しています。

児童虐待の児童相談所(以下、児相)への通告数は年々増加しています。大きな事件が起こると、社会問題化します。そして「なぜ児相は子どもを救えなかったのか」などさまざまな意見が出ます。私は大学教員ですが福祉分野に特化したデータサイエンティストを名乗っています。

仕事の内容は、虐待が社会にどのようなインパクト(主に損害)を与えるのかを可視化し、それを防止、予防するにはどのような政策が好ましいのか判断材料を施政者に提示することです。

なぜ提示する必要があるのでしょうか? これは政策評価という分野の話に少し飛びます。

政策評価が難しい日本ならではの特徴

今は少子化です。少子化は最も国力、とくに社会保障の持続的維持を破壊するので、各国はすべての政策でもとくに重要なものとして力を注いています。

わが国はそれを行わないので、少子化がさらに進行しています。つまり、子どもはそもそもサイレントマイノリティ(投票権もなく集団の人口が少ない)という状態ですが、さらに、虐待を受けている子どもは亡くなったりするため、もっと声を上げにくい状態です。政策評価にはユーザーの評価が重要ですが、それが難儀なのです。

一方、虐待に関わる職員は少ないです。私は保育士養成の教員でもあるのですが、全国の保育士95%以上は保育園等に勤務し、社会的養護に勤める割合は5%以下など、集団としての力が発揮しにくい状況です。また児相の児童福祉司は3800人程度しかおらず(アメリカには約4万人います)人口比を考えても極小ですし、しかも公務員ということもあって、国の政策が誤っていたり疑問があっても言いにくいわけです。

このようなわが国の特徴があり、従事者や虐待の被害者の声を政策化するというのは、そもそも暗数も多く全容を明らかにすることが難しいというのが、前提条件としてあります。

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