子どもの虐待による「社会的コスト」は甚大だ

児童虐待を「お金」で可視化してみると…

わが国においても児童虐待を受けた子どもは学歴、医療費(とくに精神疾患)、自殺自傷、犯罪などさまざまな影響を与え、児童虐待は、虐待を受けた子ども個人の問題にとどまらず、社会全体に大きく影響する問題であることがわかりました。

見える化(お金)で表したことで、他分野の比較ができるようになりました。例えば東日本大震災の福島県の被害額は1.9兆円と、ほぼ児童虐待の間接コスト(1.5兆円)と同額です(※社会的コストでは誤差の範囲内となる)。

しかし当時の震災の福島県復興予算は0.5兆円であり、児童虐待の5倍の額となっています。震災の対応も大切です。しかし児童虐待はそのコストが毎年かかるのです。ちなみに来年度予算では福島県の復興予算は0.16兆円となっています。震災というのはその被害額は低減していきますが、児童虐待は毎年それが新規に積み上がっていくのです。

国際比較もできるようになりました。「児童虐待はすべて桁が違う」といわれていますが、人口比を考えても虐待対応の直接コストがわが国は0.1兆円、アメリカは3兆円、30倍異なるのは明らかに政策として誤っています。また日本より人口の少ないコストを算出している諸外国よりも予算が少ないのです。

データサイエンスの発達で現れてきた兆候

ミクロでいうと、例えば児童福祉司の年間担当ケース数はわが国では100件を超えますが、他国では、20件以下、多くても30件は越えないシステムになっています。これはケースが多いと職員の負担が増える、適切な対応ができないというよりも、ケースが多いことは子どもが適切なケア支援を受けられない、子どもに対しての人権侵害となるからです。

このように社会的コストの考えは、問題を見える化するということで重要です。しかしこの分野はそれをやろうとする人が少ないのが現状です。つまり現場のことがわかる従事者は多くが文科系であり、大学で数学、統計学などが必須ではなくほとんど学んできていません。課題や困難さを見える化をすることが難しいのです。

しかしデータサイエンスの発達により大量のデータを収集、分析、予測することが容易になってきました。これからは対人援助(ソーシャルワーク)はデータサイエンスに組み込まれていくでしょう。もうその兆候が世界の学術には現れています。

前回(2014年)の社会的コストの算出には10年かかりましたが、次の算出はおそらく2年程度で完成すると予測しています。現場と研究をつなぎ、子どもや従事者のアドボカシー(社会運動))として社会的コストは機能していくでしょう。少しでも興味を持っていただければ幸いです。

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