「ウクライナ機誤爆」で今度こそヤバいイラン

アメリカより憂慮すべき国民の反感

中東では、対立する双方の間で情報が食い違ったり、180度違ったりするのはしばしば。情報統制が行われたり、メディア自体が政府や特定の政治主体の影響下に置かれていたりする場合があり、露骨な情報操作が目につく。誤報であっても、流された情報を信じる層が一定の割合で存在し、メディアリテラシーの欠如も目立つ。80人殺害という数字には、ソレイマニ司令官を殺害されたことに対して、相応の報復を行ったとイラン体制の支持基盤である保守層に示さなければならないイラン政府の焦りがある。

そもそもソレイマニ司令官の存在も、イラン国内では演出されてきた。ドキュメンタリー映像などを作成して不屈の司令官という英雄像を作り出した。保守層の間では、このような演出が受け入れられ、実際に英雄だった。

一方で、革命防衛隊、とくにコッズ部隊のイラクやシリア、レバノン、イエメンなどでの活動は、イランの対外イメージを損なうなど国益にとってマイナスに作用しているのではないかという見方も台頭していた。

反米思想を改めて喧伝する機会に

そういう観点から言うと、ソレイマニ司令官殺害は、イランの体制にとっては渡りに船の側面があったといえる。イランのメディアは、「英雄」の死を大々的に伝え、南東部ケルマンで行われた葬儀には、数百万人が参加。大勢が押し寄せたため、将棋倒しで50人以上が死亡する事態となった。

イランには反アメリカ、反イスラエルで凝り固まった保守層が存在し、ソレイマニ司令官もこうした層から絶大な支持を集めていた。体制にとっては、司令官の死は、反米思想を改めて宣伝する格好の機会となった。普段は体制や革命防衛隊を好ましく思っていない層も、司令官暗殺というアメリカの乱暴なやり口を前に、体制批判を展開しづらい雰囲気が広がったのだ。

イランの思想操作は、今に始まったことではない。イランの反米、反イスラエルというイデオロギーも、体制を維持して強化するために意図的に作られてきた側面がある。

1948年に建国されたイスラエルを、イランはイスラム教徒が多数派を占める国家の中ではトルコに次いで2番目に早く承認した。対スンニ派という点でイランとイスラエルの戦略的な利害が一致したからだ。イランはアメリカとも親密な関係を築き、今も当時供与されたアメリカ製戦闘機を保有する。

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