悩めるソフトバンク、綱渡りの米国市場攻略

Tモバイル買収実現に向けロビーイングに乗り出す

ただし足元での同社の躍進は、ソフトバンクにとって買収金額の膨張を意味する悩ましき事態だ。すでに株価は昨年5月再上場時の16ドル台から足元では倍増の32ドルまで上昇している。

1月には他社から乗り換えるユーザーに最大650ドル支払うサービスを始めるなど、Tモバイルは攻めの姿勢を崩していない。今後もユーザー獲得が進めば、さらに株価は上昇するだろう。ドイツテレコムとしては、少しでも高く株を売りたいわけであり、Tモバイルの大胆不敵な戦略は狙いどおりの成果を上げているといえるだろう。

武器はそろっているか

一方のスプリントは苦しい。昨年10~12月に契約数が増加に転じたものの、その中身は利益貢献の薄いプリペイド契約が中心だった。

そこで、ポストペイド契約を獲得すべく、満を持して1月に投入したのが「Framily(フラミリー)」と呼ばれる新プランだ。名前のとおり、家族や友人でグループを作り、グループ内の回線数が増えると、1回線当たりの利用料が割引される仕組み。ソフトバンクモバイルの藤原和彦CFOは、「今後のスプリントの軸になるプランができたと思っている」と語る。

追撃に向けた武器に想定しているのが、世界最大の携帯卸売業者、ブライトスターだ。ソフトバンクとスプリントはすでにアイフォーンを共同調達しており、世界55カ国に拠点を構えるブライトスターと調達規模を広げることで、端末メーカーに対し、一段の交渉力を持つことが可能になる。端末のみならず、アクセサリー製品でもシナジーも期待できる。

足元では、アクセサリー事業を担当するソフトバンクBBとの連携も始まった。ソフトバンクBBの溝口泰雄取締役常務執行役員は「ウエアラブル製品やBBが開発した製品をスマホとセットで販売すれば、米国でも他社と違った提案ができる」と意気込む。

ただし、スプリントは肝心のインフラに課題を抱える。情報通信総合研究所の岸田重行上席主任研究員は「米国では、ネットワーク品質の差がそのまま各社の競争力の差になっている」と指摘する。すなわちスプリントのネットワークはベライゾンやAT&Tに遠く及ばず、競争力に乏しいというわけだ。

実際、10年に先行してLTEサービスを提供し、設備投資を重ねたベライゾンはその成果を満喫している。だが、スプリントはカバーエリアの狭さに加え、LTEに利用する電波の帯域幅も狭いため、十分な通信速度を提供できていない。ベライゾンと同じ土俵で勝負できるようになるのは、数年先のことだ。「まずはネットワークの整備が最優先。当面は、他社の攻勢に対しユーザーを防衛しながら戦う我慢の展開になる」(藤原CFO)。

しかし、再建にまごつくようであれば、上位の追撃どころか、勢いづくTモバイルに抜かれ、気づけば4位転落ともなりかねない。

当局の説得に失敗し、買収交渉が長期化した場合、スプリントは単独で当面の戦いをしのぐ必要がある。そうした場合、ブライトスターだけでなく、さらに有力な武器をそろえておかなければならない。

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