中国軍は日本の脅威となるか?


中国では「反日」より「反台湾」のほうが強い

 一方、04年に中国政府から発表された「中国の国防」を読むと、中国が他国の軍事力をどう見ているかがわかります。

 米国については、『米国は、軍事同盟を強化し、ミサイル防衛システムの配備を加速化させ、地域における軍事プレゼンスを再編・強化。 』と語られており、日本については、『日本は、憲法改正を推進し、国防・安全保障政策を変化させ、ミサイル防衛システムの開発を進めるとともに、海外での自衛隊の活動を活発化させている。』 と記述されています。日米に対する警戒の高まりを感じることができます。

 さらに、台湾問題については、『(1)台湾海峡両岸関係は厳しい情勢にある。(2)「台湾独立」の分裂活動は日ましに中国の主権と領土保全を破壊し、台湾海峡の両岸およびアジ ア・太平洋地域の平和と安定に危害を及ぼす最大の現実的脅威となっている。(3)中国人民と武装力は一切の代価を惜しまずに、断固として徹底的に「台湾独立」の分裂陰謀を粉砕する。』と表現されています。

 私自身、中国(北京が多いですが)に行って感じるのは、「一般市民の間では反日よりも反台湾の方が強い」ということです。まぁ、日本人である私に「反日」を強調するわけはないですが、ビジネスマンやレストランで話した方々などからも、「反台湾」という感覚を強く感じました。

海を越えて進出する力はまだない

 こうして、どんどん軍事力を増す中国軍が、わが国の領土に侵攻する可能性はあるのでしょうか?私が防衛庁の資料を読み、軍事の関係者に話を聞いた限りでは、「現状では無理」と思われます。揚陸艦はありますが、十分な兵力を輸送する力はないようです。

 今年7月に、中国で軍事の専門家に話を聞く機会を得たのですが、その際に聞いた話は以下の4点にまとめられます。

(1)1996年の台湾海峡事件(米空母が台湾海峡で牽制)を機会に、中国は軍隊の近代化を推進している。

(2)陸上戦力については、人員削減や組織の効率化などを行っており、下図にあるように人員を半減している。兵站を強化し、後方支援能力を向上させている。


(3)海上戦力については、キロ級潜水艦やソブレメンヌイ級駆逐艦のロシアからの導入を継続、国産の各種新型艦艇も建造しており、空母への対抗を路線としている。

(4)航空戦力については、ロシアの技術に基づく第4世代の国産のJ−10戦闘機を量産・配備開始し、相当強化をしているようです。J−10は、F16とスペック上は同じくらいの性能を持つといわれますので相当な高機能機となります。

 米国のレポートなどを読むと、中国軍の脅威論が強調されており、相当巨大な兵力を持っているとのイメージがありますが、まだ現状においては、兵器の近代化は道半ばという感じがしました。ただ将来、中国が本格的な揚陸艦などを保有したとすれば、アジアの安全保障のバランスが崩れる可能性があります。

必要なことは対話

 では何が必要なのでしょうか。短絡的に近隣諸国の軍事力を脅威と定義するのではなく、きちんと軍事力を分析した上で、相手国(特に軍事関係者)と対話することが不可欠です。たとえば、ARF(ASEAN地域フォーラム:1994年より開始された安全保障問題について議論するアジア太平洋地域における唯一の政府間フォーラム。外交当局と国防・軍事当局の双方の代表が出席し、自由な意見交換を重視する)をより一層活用すること、また、現在北朝鮮問題が大きな課題となっている六カ国協議(日、米、露、中、韓、北朝)の議論対象を東アジアの安全保障までに拡大することも考えられます。このようなアジアの安全保障について、米国や関係国を巻き込みながら議論していくことが喫緊の課題となっています。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など

関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
デジカメ唯一の成長領域<br>ミラーレスで勝つのは誰だ

縮小するデジタルカメラ市場で、存在感を増しているのがミラーレスカメラだ。ミラーレス市場で4割のシェアを握るソニー。キヤノンやニコンの本格参入で、競争激化は必至!