実に面白い、海外で「日本製」の列車貸し切り タイやインドネシアで鉄道ファンが挑戦

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もちろん、ただ乗るだけではない。特別ダイヤで運行できる貸し切り列車だけに、その長所も存分に生かされている。スパンブリー線に入った列車は線内の各駅に停車していく。駅を示すものは駅名の看板のみで「秘境駅」さながら。そんな各駅で参加者が思い思いの写真を撮れるよう、十分な停車時間を設けている。

そして、最大のポイントはスパンブリーから約1km先にあるタイ国鉄「非公式」のマライメン仮乗降場まで入線したことだろう。

タイ国鉄南本線複線化工事のため、中古機材として建設会社に売却されたDD51形ディーゼル機関車。参加者が持ち込んだヘッドマークを装着して記念撮影(筆者撮影)

復路は、JR北海道から保線・工事用としてタイに渡ったDD51形ディーゼル機関車が留置されている分岐駅のノンプラドゥクで見学のために90分停車。参加者が持ち込んだお手製のヘッドマークを装着してしばしの撮影会となった。

列車はその後、暮れなずむ南本線を快走し、定刻より5分早くフアランポーン駅に到着。半日にわたり、ただスパンブリーまで往復するだけという旅程であったが、充実した時間であった。

清水さんの主催するタイ国鉄での貸し切り列車は、2018年に続き2度目。初回は「戦場にかける橋」で有名な、路線自体が観光地になっている通称ナムトク線に日本のブルートレイン改造の特別車両「プレステージ」を走らせた。「プレステージ」はいつも駅の留置線に停まっているが、実際に乗った人の話はほとんど聞かない。ならば走らせようというのがきっかけになったという。

今回は「王道」ともいえる前回と比べてコアな企画だが、前回を上回る41人が参加し、参加者たちも驚きを隠せない様子だった。人数で割れば1人当たりの運賃は9000円ほど。海外での貸し切り列車といっても、気軽に参加できる代金だ。

インドネシアの特別車両に乗る

ところ変わってインドネシア。こちらでも日本人による貸し切り列車、実は主催者は筆者であるのだが、先の例とはまた趣の異なる列車を走らせることになった。

「バリ」「トラジャ」「ヌサンタラ」と呼ばれる要人輸送格下げ車のほか、「プライオリティー」「インペリアル」など10両ほどの特別車を保有するインドネシア鉄道。写真は「プライオリティー」の車内(筆者撮影)

インドネシア鉄道も、タイ国鉄の「プレステージ」と同様に団体専用の特別客車を保有している。古くから政府要人向けの車両を格下げして団体用に活用していたが、近年は稼働率が高くなり、新たに一般客車も改装して特別車の保有両数を増やしている。その特別車両に、2019年9月から新たなラインナップが加わった。

「クレタ イスティメワ」と名付けられたこの2両編成の車両は、日本のODAで導入された日本車輌の気動車MCW302系を大規模リニューアルし、元は要人専用車だったのを格下げして誕生した。自走可能な気動車であることから、特別ダイヤでの運行も容易だ。

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