GAFAらの横暴な戦略を抑えるためにできること スティグリッツ教授が説く市場支配の経済学

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世界一イノベーションが進んでいるように見えるアメリカ経済がこれほどの低成長を記録し、その成長の果実が一般市民にまでほとんど行き渡らないのはどうしてなのか?

この疑問に対する答えのかなりの部分を、市場支配力の増大で説明できる。市場支配力がある企業は、その力がなければできないような高い価格を設定するなど、さまざまな方法で消費者を搾取できる。

こうした高価格は、低賃金同様に労働者を苦しめる。市場支配力がなければ、競争の力により超過利潤はゼロになるはずだ。アメリカの格差拡大の根底には、この超過利潤がある。

一部の企業の市場支配力が増大しているのはほぼ間違いない。では、なぜ増大しているのだろう? かつてウォーレン・バフェットは、企業が利益を確実に維持したければ、参入障壁となる堀で周囲を囲い、新規参入企業との競争により利益が損なわれないようにするのがいちばんいいと述べた。

実際アメリカでは、きわめて収益性の高い最新の「イノベーション」として、この堀をつくり、広げる能力、その結果手に入れた市場支配力を利用する能力を高めるイノベーションが生み出されている。

マイクロソフトの反競争的行為

例えばマイクロソフトは、新たな形態の参入障壁や、既存の競合企業を追い払うずる賢い方法を生み出す能力に長けていた。20世紀末の時代に、競争を制限しようとしたかつての大企業を手本に、そのような面で先進的なイノベーションを築き上げたのだ。

その好例が、1990年代のインターネットブラウザーをめぐる闘いである。当時はこの分野で、ネットスケープが際立った活躍を見せていた。パソコンのオペレーティングシステム(OS)でほぼ独占状態を築いていたマイクロソフトは、この新興企業に利益が侵害されるのを恐れ、同社を追い払おうと考えた。

だがマイクロソフトが当時開発していたインターネットエクスプローラーには、ネットスケープほどの魅力がなく、その実力だけでネットスケープに勝てる見込みはない。

そこでマイクロソフトは、パソコンのOS市場での市場支配力を利用して、アメリカのほとんどのパソコンにインターネットエクスプローラーを組み込んだ。OSと抱き合わせ、無料で提供したのだ。無料で提供されるブラウザーに対抗できるブラウザーなどあるだろうか?

しかし、これだけでは不十分だったため、マイクロソフトはさらに、ネットスケープは相互運用性に問題があるというFUD(恐怖・不安・疑念)戦術を展開した。ネットスケープをインストールすればパソコンの機能が損なわれるおそれがあるとユーザーに警告したのだ。

結局マイクロソフトは、そのほかさまざまな反競争的行為を通じてネットスケープを市場から追い出した。21世紀の初めには、ネットスケープを利用する人はほとんどいなくなっていた。

こうして独占状態を確立すると、その反競争的行為が3つの大陸で規制機関により禁止されても、マイクロソフトの市場支配は続いた。ブラウザー市場に新規参入者(グーグルやファイアフォックスなど)が割り込んでくるのは、その後の話である。

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