GAFAらの横暴な戦略を抑えるためにできること スティグリッツ教授が説く市場支配の経済学

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現在でも、市場支配力を乱用するテクノロジー系の大手企業はあとを絶たない。例えば、ヨーロッパの競争監視機関は繰り返し、グーグルが反競争的行為を働いていると指摘している。

インターネット検索において自社のサービスを有利な立場に置いている、携帯電話市場で市場支配力を乱用している、といった内容である。EUはこれらの行為に対し、それぞれ28億ドルと51億ドルという記録的な制裁金を科している。

大手テクノロジー企業は、さまざまな場面で市場支配力が利用できることを心得ている。

例えばアマゾンは、同社が第2の本部を設立すればその街に何千もの雇用が生まれることをちらつかせ、その誘致をアメリカ中の都市に競わせる際に、減税などの優遇措置を求めた。

だが地方政府がそれに応じれば当然、減税のしわ寄せがほかの市民に行くことになる。また、小企業にこのようなまねはできないため、アマゾンは地方の小売企業よりはるかに有利な立場を手にすることになる。

こうした「底辺への競争」〔訳注 政府が企業の誘致や産業振興のため、減税や労働基準などの緩和を競うことで、社会福祉や労働環境などが最低水準に向かうこと〕を防ぐ法的な枠組みが必要だ。

イノベーションに対抗するイノベーション

新たに登場した大手テクノロジー企業は、その市場支配力で、1世紀以上前に存在した独占企業以上に広く深い影響を及ぼすことになるかもしれない。

かつて、スウィフト、スタンダード・オイル、アメリカン・タバコ、アメリカン・シュガー・リファイニング、USスチールといった企業は、その市場支配力を行使して、食料品や鉄鋼、タバコ、砂糖、石油の価格を吊り上げた。

だが、現在の大手テクノロジー企業の問題は、価格だけに限らない。その市場支配力が最も顕著に表れるのが、例えばフェイスブックがそのアルゴリズムを変更するときだ。

このアルゴリズムにより、各ユーザーが目にするもの、目にする順番が決まる。このアルゴリズム次第で、あるメディアをたちまち失墜させることもできる。大衆の心に訴える新たな手段(フェイスブック・ライブなど)を生み出すこともできれば、それを絶つこともできる。

これほどの市場支配力があるため、大手テクノロジー企業に対しては、規制当局の十分な監視が欠かせない。標準的な監視ツールを活用するだけでなく、革新的な方法で市場支配力を拡大・行使する企業にも対抗できる新たなツールを開発する必要もあるだろう。

現在必要なのは、このイノベーションに対抗するイノベーションだ。競争を回復し、よりバランスのとれた経済を生み出すイノベーションである。

ジョセフ・E・スティグリッツ ノーベル経済学賞受賞経済学者

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Joseph Eugene Stiglitz

2001年ノーベル経済学賞および1979年ジョン・ベーツ・クラーク賞を受賞。イェール大学、オックスフォード大学、プリンストン大学、スタンフォード大学を経て、現在はコロンビア大学教授。クリントン大統領の下で経済諮問委員会の委員長、1997~2000年に世界銀行でチーフエコノミスト兼副総裁、2008~2009年の世界金融危機直後、「経済的パフォーマンスと社会的進歩の測定」に関する国際委員会、および「国際通貨金融システムの改革」に関する国連の専門家委員会において議長を務めた。研究活動においては、非対称情報のもたらす影響を探求し、新しい経済学分野である情報の経済学の発展に貢献した。

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