トランプがイラン攻撃後に企む「秘策」とは何か 「イラン要人殺害」は強気の選択だった可能性

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一つには好調な株価が示唆するほどは、トランプ大統領の再選は盤石でない可能性である。そしてその可能性を、表面的な強気姿勢の裏で、トランプ大統領本人が一番意識していたからではないか。

そこで再選に一番重要な実態経済の状況を細かくチェックすると、全体の経済指標が及第点を維持する一方、昨年12月に発表されたフィラデルフィア連銀調査では、トランプ大統領が力を入れてきた鉄鋼や石炭産業の不振が目立った。

今回の大統領選の最重要州はペンシルバニア?

昨年末は、そこにUSスティールの大量解雇の発表が追い打ちをかけた(ミシガン州の工場だけで1500人)。この状況は、直近の調査で、前回ヒラリー・クリントン候補の油断でトランプ氏が勝利したミシガンやウイスコンシン州で、今回は民主党が勝利する可能性が高いことと重なる。そうなると、トランプ大統領としては絶対に「ラストベルト」最大の大票田であるペンシルバニア州を失うわけにはいかない。だが現状は、好調な株価が示唆するほどのユーフォリア(熱狂)はそこにもないのだ。

これまでの大統領選では「フロリダ州とオハイオ州を制した者が大統領選を制する」という有名なジンクスがあった。そこで、NY生まれ、NY育ちのトランプ大統領は、わざわざ住民票をNYからフロリダへ移し、再選に向けてフロリダを盤石にしたはずだった。

だが、専門家の間では、今回の大統領選は前述のペンシルバニアが最重要州になるとの観方が多い。理由は、全体として移民や若者のリベラル票が増える中、仮に前述の最重要2州でトランプ大統領が勝っても、本来共和党の地盤であるアリゾナやジョージア、場合によっては大票田のテキサス州までも「コンテスト」になる可能性があるからだ。

そして次にトランプ大統領を強硬策へ掻き立てた要因として考えらえるのは、ここまでは盤石の試合運びだった弾劾の行方である。

前回のコラム「トランプ大統領再選を阻む影の勢力の『正体』」でも紹介したように、ここまでの弾劾審議は、昨年末のNHK紅白歌合戦のように、白組(便宜的にトランプ大統領と共和党を指す)の圧勝だった。ところが、民主党の執拗な攻撃で、前大統領補佐官のジョン・ボルトン氏が自分に不利な証言をする可能性も出てきた。

ならば「軍産議員」も、リチャード・ニクソン大統領に引導を渡したバリー・ゴールドウォーター上院議員(1998年死去)のように、最後の最後、自分を裏切る可能性を否定できない。だから、その可能性を完全に断ち切るためにも、ここで思い切った行動に出る必要もあったのか。2003年、株価下落に苦しんでいたG・W・ブッシュ大統領が、再選を控えてイラクへ侵攻したように、トランプ大統領も、イラン攻撃という手段を選んでしまったのではないか。

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