トランプがイラン攻撃後に企む「秘策」とは何か 「イラン要人殺害」は強気の選択だった可能性

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筆者はトランプ氏が大統領になるずっと前、1990年代の終わりから、相場の材料として、トランプ氏のヒストリーを追いかけてきた。不動産王としての彼の成功と挫折は有名なので省略するが、このタイミングで思い出すのは、1980年代のトランプ氏のプロフットボール興行への挑戦と挫折である。

1980年代、本業が絶好調だったトランプ氏は、最も著名なNFL(ナショナルフットボールリーグ)がオフシーズンになる春から夏にかけて、このNFLとは別の新プロフットボールリーグを立ち上げた(USFL)。そして立ち上げから2シーズンが過ぎたころには、思惑通り新リーグも軌道にのり、NFLから移ってくる有力選手も現れた。

ところが、そこで調子に乗ったトランプ氏は、まずNFLとの合併を企み、それが失敗すると、今度は独占禁止法で巨人であるNFLを訴えた。だが無残にも裁判に負け、呼応するように、トランプ氏の本業も転げ落ちていった

だが、そこからアメリカの大統領になったのがトランプ氏の真骨頂でもある。2016年の大統領選も、予備選で旧来型の共和党候補を蹴散らした後、夏場には多くのスキャンダルが出て、トランプ氏の支持率は凋落した。そこからの奇跡的なカムバック。つまりトランプ氏には常に成功・凋落・復活の3つのフェーズがあった。そこで筆者としては、この過去のトランプ氏の経緯を踏まえ、2016年の衝撃の大統領選勝利の後も、どこかで同じようなモメンタム(勢い)の波を予想してきた。だが、この3年間、トランプ大統領は勢いを継続したままここまで来た。

「麻薬患者治療を諦めた中央銀行」はどこまで機能するか

それが何を意味するか。最後のファクターは中央銀行だろう。昨年9月からのFEDと中国の中央銀行による緩和策は、昨年の年末にかけての株高の直接的な要因である。直近発表になった2019年のヘッジファンドの平均パフォーマンスは9%のプラスだったが、一方でインデックスは約30%のパフォーマンスを記録した。この乖離は、中長期の投資家が、実際は2019年の上昇相場を通し、米株のETFなどから大量の資金を引き上げていた(2019年の米株のETFは17兆円の出超。またバークシャー・ハサウェイの現金比率は過去最高であった)。

それに対し、大手銀行が同9月にレポ市場を揺さぶったことで、慌てたFEDからの膨大な流動性を甘受した短期トレード・空中戦との差が出たとみている。短期を中心とするウォールストリートのトレーダー、またはシタデル・インベストメント・グループなど、システムトレードに徹するヘッジファンドは、米中貿易協議のヘッドラインでのモーメンタムトレードに徹し、結果的にそれが薄商いの中でインデックスを押し上げた(CITADELは19%の好パフォーマンスをあげた)。

ただし、今のFEDは、基本的に麻薬中毒患者の治療を諦めた医者のようなものだ。そのスタンスはインフレが起きない限り継続は可能だが、国際情勢や、自然災害によるインフレの可能性、さらに社会主義台頭による賃金上昇のプレッシャーの中、どこまでこのアセットバブルを継続できるかは誰にもわからない。機会があれば、次回以降のどこかでこのあたり、つまり徹底的に中央銀行を解説したい。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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