トランプがイラン攻撃後に企む「秘策」とは何か 「イラン要人殺害」は強気の選択だった可能性

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だとすると、それは同じような弾劾裁判を乗り切ったビル・クリントン氏の「成功例」とは異なるパターンだ。1998年、女性スキャンダルで弾劾の最中だったクリントン大統領は、弾劾の影響の「スピン」を狙い、1993年のワールドトレードセンター爆破テロの首謀者のオサマ・ビン・ラデイン殺害を企てた。当時のアメリカ当局はビン・ラディン氏の行動を把握しており、殺害は可能だったという。だがクリントン大統領は、最終段階で殺害を思いとどまったとされる

トランプ大統領は強気の賭けに出た?

一方で、トランプ大統領のコメントを聞いて、2002年にイラク戦争の正当性を問われたラムズフェルド氏(元国防長官)が言い訳に使った有名な「Unknown unknowns」という表現を思い出した。これは、人間は「知っていることを知っている (Known Knowns)」、そして「知らないことがあるかもしれないことも知っている(Known Unknowns)」に対する「究極の言い訳」だった。

つまり、今回トランプ大統領は、殺害を躊躇したクリントン氏の「弱さ」が、数年後あの「9.11」で3000人を超えるアメリカ人の命を奪ったというナラテイブ(ストーリー)を、用意しているのだろう。だとしても、せっかく株価が好調な今、今回のトランプ大統領の決断は、個人的には災いになる可能性を強く感じる。

なぜならニクソン氏が刑事罰の対象だったことに比べ、クリントン氏や今回のトランプ大統領は弾劾で刑事罰の対象ではない。ならば、好調な経済を維持しながら、無党派層の支持さえ失わなければ、弾劾を乗り切り、さらに弾劾を味方にすることもできるはずだ。何もトランプ大統領は、ここで過激な決断をする必要はない。

そこで最後に思い当たるのは、この3年間、概ね思い通りだったトランプ大統領が、強気の「ダブルダウン」(ブラックジャックで強いカードが来ていることを前提に、掛け金を2倍にして勝負に出ること)に出た可能性である。それはトランプ大統領の性癖ともいえる、誰もコントロールできない領域である。

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