大塚明夫「声優を夢見る若者が陥りがちな失敗」 努力せずちやほやされたいだけじゃないか?
声優として食えるレベルまで売れるというのは難しいことですが、ここでは「ちやほや」は必須条件ではありません。私も別にキャーキャー言われる部類の声優ではありません。質の高い仕事ができればいい。実力と運があれば生き延びられる。それだけです。
そして「ちやほやされる」ことが望みならば、それはそれでやることがたくさんあります。CDを出したりイベントをやったり、さまざまな戦略がうまくいけばちやほやされます。食えるかどうかはこれも運です。
私は1と2の混合型といえるでしょうか。食えなくてもなんとかしてやる、と思ってこの世界に入ったのでとくにこうした分類を意識したことはありませんでしたが。
自分がいちばんやりたいことは何ぞや
あなたが「声優になって、あわよくば役者として評価され、あわよくばちやほやもされ」と考えているのなら、もう一度あたまっから考え直したほうがよろしいでしょう。何をやりたいかが全然わかっていないからです。そのとき考えるべきは、自分の本当の望みと、声優という道は諦めるということです。
このあたりは、各々の自己顕示欲や承認欲求と密接に結びついた問題です。だからこその「生き方の選択」なのです。
その見極めをするのにも、まずは「自分がいちばんやりたいことは何ぞや」ということをこそ、より正確に、より自分に厳しく知らなければなりません。
昔うちの事務所に所属していた声優で、面白い男の子がいました。彼は、「僕は役者になんて別になりたくありません。僕はとにかく女の子にモテたいんです。顔は二枚目じゃないけど声はいいから、キャーキャー言われる手段として声優という仕事を選びました」と、マネージャーにはっきり宣言していたのです。
そのときのマネージャーというのが納谷僚介氏だったのですが、僚介氏はその男の子のことを気に入っていました。目的が明快だからマネージャーとしてもやりやすかったのだそうです。アドバイスも「かっこよく見えることをしようよ」「髪型とか服をもっとこうしたら」なんてことが中心です。芝居云々は二の次です。
結局彼はうまく人気がのびず事務所を辞めてしまったのですが、そのときも、マネージャーともどもすっきりしたものでした。目的があってこの世界に来て、その目的が達成できないとわかったから辞める。とても明快です。本人だって納得してこの世界を去りました。
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