買収観測Jクルーがユニクロにもたらすモノ 50億ドル大型買収の費用対効果はいかに
「ファーストリテイリングにとって、Jクルーは欠けていたマーケットポートフォリオを埋める申し分ないブランド」(ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリスト)
現在、高価格帯の「セオリー」と低価格帯の「ユニクロ」を保有しているが、Jクルーはその中間価格帯に当たる。Jクルーの他国への出店や共同マーケティング、ユニクロ米国事業での認知度向上などといったシナジーも発揮しやすく、買収のメリットは大きい。
「柳井正社長がアパレル業界のカリスマ経営者を手中に収めようとしている」(グローバルSPA企業に詳しい、ディマンドワークスの齊藤孝浩代表)という見方もある。
現在もJクルーを率いるミラード・ドレクスラーCEO(最高経営責任者)は、過去にGAPのCEOを務め、カジュアル・ラグジュアリー「バナナリパブリック」買収やGAPの低価格業態「オールドネイビー」立ち上げを行い、低迷していたGAPを蘇らせた中興の祖。Jクルーには、2003年にCEOに迎え入れられブランド刷新に成功した。アップルの社外取締役も現任する大物だ。
ファーストリテイリングは、2013年12月に元FOREVER21副社長兼CFO(最高財務責任者)のラリー・マイアー氏を米国事業のCEOに昇格させるなど、近年、積極的に外部人材の登用を進めている。ドレクスラー氏は喉から手が出るほど欲しい人材だろう。
「50億ドルは高すぎる」
とはいえ、PE2社が売却価格として提示している50億ドル(約5100億円)は妥当なものなのだろうか。
ファーストリテイリングの2013年11月時点での現金および現金同等物は3235億円。フリーキャッシュフローも買収などの特殊要因がなかった2012年8月期には900億円以上を稼ぎ出しており、金融機関からの資金調達も容易だ。「ファーストリテイリングにとって5100億円はエクイティファイナンスなしでも十分準備できる金額」(風早氏)。
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