買収観測Jクルーがユニクロにもたらすモノ 50億ドル大型買収の費用対効果はいかに

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だが、買収価格の割高・割安の判断に用いるEV/EBITDA倍率は、市場平均が7~8倍。これに対して、Jクルーの場合、14年1月期のEBITDA3.7億ドルを基に計算すると、約17倍となる。仮に買収金額とされる50億ドルにJクルーの負債15.6億ドルが含まれていたと考えても、約13倍と高い。これは買収費用の回収に17年間かかることを意味しており、市場関係者は「高すぎる」と口をそろえる。

定期的に飛び出す怪情報

過去のファーストリテイリングの買収は、Jブランドの買収も、セオリーの株式追加取得も、いずれも200億円規模。5100億円での買収が実現すれば、ダントツで過去最高額となる。

「仮に協議があったとしても交渉はまだ初期の段階で、50億ドルという数字はJクルー側の言い値に過ぎないのではないか。この金額で買収するなら“ネガティブ”を出す。海外事業をはじめ、ほかに効率的に投資に回せる」(風早氏)

ファーストリテイリングは、2007年に米国の高級百貨店、バーニーズニューヨークを巡る買収でドバイの政府系投資ファンドと競り合った際、提示額を9.5億ドル(当時のレートで約1140億円)まで引き上げた後に買収を断念した過去がある。高い買い物は避ける可能性も高い。

また、2013年2月にはGAPブランドを買収するという観測が市場に流れて株価が急上昇した局面もあったが、その後の進展はないなど、大型買収の怪情報が定期的に出てくる節もある。柳井正社長はJクルー買収に対して、どんな計算を弾いているのか。まだまだ状況はいかようにも動きそうだ。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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