日本郵政が役員を大刷新、半透明な決定プロセス
日本郵政が10月28日に決定した新役員人事が波紋を呼んでいる。民営化路線からの180度転換ともいえる郵政改革は、鳩山政権が掲げる主要政策の一つ。国民の注目度も高い。にもかかわらず、「新日本郵政」の屋台骨となる役員陣の決定はドタバタ感が漂うものだった。
新役員の布陣は、すでに明らかになっていた齋藤次郎社長(前東京金融取引所社長)を含めて総勢16人。官界、財界、学界など多方面からの人選で、特に複数の経済界関係者の役員就任について、齋藤社長は「財界が(今後の日本郵政を)支援してくれることを意味している」とその意義の高さを強調した。
今回、特徴的なのは、これまでの西川善文前社長体制と比べ、副社長が従来の1人から4人へ増強された点だ。その構成は、坂篤郎・前内閣官房副長官補、足立盛二郎・元郵政事業庁長官という財務省、旧郵政省の官僚出身者が2人。そのうえで「(官民の)バランスをとるため」(大塚耕平金融担当副大臣)、別に2人の民間出身者が副社長に選任されたという。
とはいえ、今回の人事に首をかしげる向きもある。まず、その決定プロセスには「不透明」という指摘が早くも上がっている。人事決定に不可欠な役割を担うはずの指名委員会の中で、奥田碩委員長以外は全員が辞任した。それを受けて、同委員会の判断を仰ぐことなく人事が決まった。委員の辞任で同委員会の機能が期待できなくなったことは間違いないが、あるべきプロセスとは異なる形で決まったのも事実といえる。
加えて、副社長の一人で旧日本長期信用銀行出身の高井俊成氏は、一時、株式市場などで注目された不透明な増資案件があった年、当該企業の監査役に就任していた経緯もある。銀行や証券業界では、同氏の副社長就任に戸惑う向きが少なくない。今後、国会などの場で取りざたされることも予想される。
亀井静香郵政担当相は、大きな方向転換となる日本郵政の役員人事には「新しい酒は新しい革袋に」と大刷新をアピールしていた。確かにイメージはがらりと変わったが、はたして、革袋への新しい酒の注ぎ方が高い評価を得られるのか。齋藤新社長率いる日本郵政の船出には、いささか不安を感じさせるものがある。
(浪川 攻 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
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