太陽光の健全な発展を妨げる悪質業者排除へ 経産省、FITでの不当な料金上乗せも見直し

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また、認定を受けた後、土地のトラブルが生じて着工が遅れるケースもある。その解決のため、認定時点で当該土地の登記簿謄本を添付させ、共有地における全地権者の同意を書面で確認する。地権者が複数の事業者に同意書を出した場合には、双方に認定を与えないなど運用改善を図る。

回避可能費用のベースを火力平均に変更か

2月28日の有識者会合では、「回避可能費用」の算定方法の見直しも同18日に続いて議論された。FITでは、電力会社が再エネを買い取る費用は「賦課金」として電力料金に上乗せされている。13年度は標準家庭で月額120円程度だ。この賦課金は、当該年度に予想される買取費用の総額から、電力会社が再エネ買い取りで削減できる自社の発電コスト(回避可能費用)を差し引いて算定される。回避可能費用が大きいほど賦課金は小さくなる。

現状では、回避可能費用は全電源平均の可変費用(燃料費中心)をベースに計算されている。しかし、燃料費が安く実際には削減対象とはならない原子力が含まれるなど、回避可能費用が過小評価(賦課金は過大評価)されているとの批判がある。電力会社が再エネを買い取る際には、「運転コスト単価の高い電力から優先的に稼働を抑制すること(メリットオーダー)が必要」(自然エネルギー財団)と考えられるからだ。同財団の試算では、年間の賦課金は1000億円以上も過大に上乗せされている可能性がある。

28日の会合では全電源平均に代わる選択肢として、火力・水力平均、火力平均、卸電力市場取引価格が検討されたが、有識者の間で比較的賛同が多かったのが火力平均。調整に最も頻繁に活用される揚水式水力が省かれるという欠点はあるが、調整電源単価を求めるうえで最も近似値とする意見が多かった。

一方、火力・水力平均はダム式水力など明らかに需給調整に用いていない電源も含まれており、賛同者は皆無。卸電力市場取引価格については、現状、取引量が小売り全体の1%程度に過ぎず、月ごとの変動も大きいため、指標として不安定と評価された。

一部には、FITの長期的性格や将来的な電力制度改革を考え、見直しは慎重に議論すべきとの意見があるほか、再エネの買い取り増大に伴う既存電源の固定費削減分も含めるべきとの考え方も示された。

また、回避可能費用を見直して賦課金が減ると、電力会社の電力料金収入が減少することになる。「現行制度を前提として事業性判断を行っている新電力の多くの事業者が致命的な影響を受ける」(エネット)として、再エネ電源の調達比率が多い新電力に対して、激変緩和措置を設けるべきとの意見が出ている。

制度を見直すにしても、再エネの普及拡大を阻害しては元も子もない。できるだけ電気利用者にやさしく、かつ事業者の健全な発展を後押しする制度が必要だ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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