ファミマが進める不振店舗「直営化」の真意 「再生本部」を設置の背景に出店戦略の変化

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ファミマが店舗再生組織を新設した背景には、出店よりも既存店重視の姿勢に転換したことがある。

全国一律の品ぞろえや店舗運営を徹底するチェーンストア経営を標榜するコンビニは、大量出店してシェアを獲得し、競合を圧倒することで業容を拡大してきた。フランチャイズ方式をテコに店舗網を広げることが中心で、本部が廃棄ロスや人件費、水道光熱費など、すべての費用を負担する直営方式を採用するケースは少なかった。

立地が店舗売り上げを大きく左右することもあり、好立地物件があれば競合に取られる前にとにかく場所を確保して出店。十分な売り上げを計上できずに採算が悪くなった店舗は、直営に変えて金や人を投入してじっくり立て直すより、早期閉店して新たな土地にどんどん出店するほうが効率的とされていた。

いち早く店舗抑制に舵を切ったファミマ

ところが、ここにきてコンビニの売上高が頭打ち傾向になる。セブン-イレブン、ファミマ、ローソンの大手3社はともに、スーパーやドラッグストアなどとの競争激化により、2011年度以降、1日あたりの1店舗売上高が伸び悩む。店舗網拡張を急ぐあまりに、土地オーナーから高額な賃料を提示されてもそれを断れないケースがあり、本部の負担は増していた。

さらに昨今の人手不足問題も影響し、コンビニ各社は店舗数を大きく増やさない方針へと転換した。セブン-イレブンは2018年度の出店が1389、閉店773だったが、2019年度は出店850、閉店750計画へと出店数を大幅に縮小。ローソンも2018年度の出店1030、閉店378だったが、2019年度は出店660、閉店680を計画している。

2016年にサークルKサンクスを買収し、店舗整理を徹底するファミマは看板替えによる店舗数増減を含め、2018年度の出店1517、閉店2317だったが、2019年度は出店500、閉店400を予定している(いずれも単体ベース)。

大手3社の中で、いち早く店舗数抑制に舵を切ったのがファミマだった。ファミマの総店舗数はサークルKサンクス買収によって単純合算で約1万8000店もの規模となるはずだったが、2019年11月末時点で1万6532店にとどまっている。2016年度から2018年度にかけて5003店を看板替えする一方、ファミマと競合する店舗など約1300店を閉店してきた。

ファミマの澤田貴司社長は「コンビニ市場は飽和している」と常々語っていた(撮影:佐々木仁)

ファミマの澤田貴司社長は「コンビニ市場は飽和している」と常々話しており、今後も大きく店舗数を増やさない方針だ。現在の1万6500店程度の規模は維持するものの、2020年度以降も店舗数は増えても微増程度の予定だ。「足元は客数が減っているが、既存店に大きな投資をして競争力を高めることで、お客さんの来店を増やさなければならない」(澤田社長)。

とはいえ、こうしたファミマの姿勢に、競合コンビニの中堅社員は首を傾げる。「直営の場合は本部社員が運営するので、店舗の売り上げに生活がかかる加盟店オーナーとは本気度が違う。そもそも立地移転が必要な店舗は、周辺にライバルが多いなど商圏そのものが厳しい状況にあるケースがほとんど。直営店にしたら売り上げが増える、というほど単純なものではない」

出店より既存店の底上げに優先順位が置かれるようになったコンビニ業界。不振のフランチャイズ店舗を直営にしてじっくりと立て直すファミマの新組織は、規模の拡大に邁進してきた業界の戦略が、地に足を付けた成熟した戦略に転換することを示しているのかもしれない。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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