サッポロビール「シェアは目標にしていない」 業界4位でも4年連続でビール売り上げ増

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縮小

――フードロス対策も、待ったなしの状況です。

ビールの賞味期限に関しては、今まで品質向上策を積み重ねてきた。その結果、(これまで9カ月だった賞味期限を)2020年3月から12カ月まで延長する。

だが、流通市場に対してインパクトが出るのは賞味期限の「年月旬」表示を「年月」にすることだろう。2020年3月の実施を予定しているが、旬まであったことで(在庫や物流コストが増える)ロスが出ていた。倉庫の占有スペースが増えてしまっており、年月表示に変えれば、倉庫の作業などをもっとシンプルにしていける。

不動産好調でもグループの軸はビール事業

――2019年はビール大手で多角化や海外展開を進める動きがありました。今後国内ビール事業は難しくなりますか。

難しくなる。だが、国内市場が縮小するから海外に逃げていくという発想では、よい経営にはならない。輸出に関しては東アジア、東南アジアがまずまず順調にいっている。

1月からはサッポロベトナムがサッポロビール傘下に入った。現地工場はわれわれの技術チームが立ち上げた。このロンアン工場は、東南アジアやオセアニアへの輸出拠点にする。2019年にはオランダのアムステルダム近郊に販売子会社を立ち上げ、営業活動を開始した。

中国も非常に順調だ。サッポロはサッポロプレミアム(650ミリリットル)という商品を、高価格帯の他社輸入ビール(232円~)よりも、もう一段上の価格帯(418円~)で売っている。われわれは中国でのビジネスは2009年に一度撤退したが、2018年11月ごろから再び輸出を始めている。

――親会社のサッポロホールディングスにおいては、ここ2年ほど不動産事業が収益柱になっています。今後のビール事業の位置づけは?

サッポロホールディングス傘下にサッポロ不動産開発という会社があるが、街を造っていくという観点で社会貢献している。確かに、利益の規模で言うと、ここ2年はサッポロ不動産開発がサッポロビールを上回っている。ただ、「だからサッポロ不動産開発がホールディングスの中核だ」という見方にはならない。

ホールディングスの中では、あくまでサッポロビールが軸だ。社員数も多く、工場拠点数もある。日本全国のみならず世界に営業拠点もある。2020年は「ヱビスビール」を発売して130周年となる。記念すべき年なので拡販に注力する。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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