あのトヨタが「日本橋」に構えた開発拠点の全貌 自動運転技術を極めるオフィスが本格稼働

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オフィスにはバーチャルリアリティ(VR)を取り入れたシミュレーターが設置されている。自動運転から手動運転に切り替える際には車の動作状態をドライバーにわかりやすく伝える必要があり、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上も欠かせない。

この日はメーターのデザインがドライバーに与える影響を調べるデモンストレーションの実演も行われ、ドライバーの視線の動きや反応速度、ハンドルを握る力を計測していた。研究開発から製品化までの時間を大幅に短縮できるという。

人材育成に強いこだわり

人材育成にもこだわりが見える。社員教育プログラムとして「DOJO(道場)」を開設。最先端のソフトウェア技術はもちろんのこと、英語や日本語、イノベーションを起こすための発想法を学ぶ講座まで提供する。虫上広志COO(最高執行責任者)は「現代は技術の進化が早い。社員が高い生産性を維持するためには学び直しが欠かせない」と道場開設の狙いを説明する。

道場の教師を務めるジョナサン・ベスーン氏(撮影:尾形文繁)

IT業界ではキャリアアップのために転職を繰り返すエンジニアも多いが、TRI-ADではできるだけエンジニアに長く働いてもらおうと考えている。

道場の教師を務めるジョナサン・ベスーン氏も「ライフタイム・エンプロイメント(生涯活躍できる人材であり続けること)のカギとなるのはライフタイム・エデュケーション(生涯教育)」と語る。エンジニアのスキルをアップデートする機会を会社が提供するのには会社として開発力を高めるのはもちろんのこと、離職を減らす狙いもありそうだ。

【2019年12月26日19時59分追記】初出時のライフタイム・エンプロイメントの訳を上記のように修正いたします。

日本企業では人手不足が顕在化し、人材の流動性も高まっているが、そういう時代だからこそ、社員を大切にして研修や教育の場を設けていく意味がある。良質で多様な人材が競争力を生み出すという信念を愚直に実行に移しているというところに、新しい時代の企業の姿が見えた。

トヨタはドライバーが運転する乗用車、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)と呼ばれるサービスカーの両方で自動運転技術を実現しようとしている。東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年7~9月には東京でサービスカーによる自動運転の一般向け体験試乗を計画中だ。

カフナーCEOは「トヨタグループのものづくり力と新しいソフト開発手法を融合させて、世界最先端技術を築いていく」と語る。江戸時代に日本の道路の起点となった日本橋。由緒ある土地を舞台にトヨタの挑戦が本格化する。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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