あのトヨタが「日本橋」に構えた開発拠点の全貌

自動運転技術を極めるオフィスが本格稼働

TRI-ADではトヨタなどからの出向者には出向元の給与体系が適用されるが、新規採用した社員の給与体系はトヨタ本体とは異なる。世界各国から有能な「トップタレント」と呼ばれる人材を集めるために、競争力のある水準で報酬を提示しているという。報酬も大事だが、「世界で1番安全な車を作る」というミッションに共感してもらえるかが最終的に人材を惹き付けるうえでポイントとなる。

トヨタで自動運転技術の開発に長く携わってきたTRI-ADの鯉渕健CTOは「エンジニアの数はまだ十分ではないが、だいぶ口コミで集まってきている。ITエンジニアにはリアルの世界で車を開発できるところにやりがいを感じてもらえている」と話す。

シリコンバレー流を入れた開発手法

TRI-ADが開発するソフトウェアのうち、実際に車に搭載されるオンボード向けは10%にすぎない。この車載用ソフトウェアをバグのない完璧なものにするために必要なのがディープラーニングと呼ばれる機械学習やシミュレーションをするための「開発ツール」だ。これが全体の90%を占める。

実車を用いた実証実験には膨大な車の数と時間が必要になるため、シミュレーションは欠かせない。例えば、日本中の高速道路をバーチャルデータに置き換えるのにもソフトウェアによるツールを使う。TRI-ADは車載用ソフトウェアの開発スピードを引き上げるために、「開発ツール」まで内製しているのだ。

鯉渕健CTOは「車のことをよく知っている人とソフトウェアやAIを開発してきた人が混ざり合ってこそ、信頼性の高い自動運転技術を実現できる」と強調する(撮影:尾形文繁)

おのずと開発工数は増える。「ソフトウェアは複雑かつ膨大な量になるため、従来とは画期的に違う効率のいいやり方で開発していかないと、安全な車を突き詰めていくことができない」(鯉渕CTO)。

そこでソフトウェア開発の手法にはシリコンバレー流を取り入れた。「スクラム開発」と呼ばれる手法だ。スクラム開発ではプロジェクトを短い単位に区切り、およそ8人のチームで約2週間ごとに、ソフトウェアの開発とテストを反復する。チームワークを高めるために、デスクの配置もチームごとのハニカム式になっている。

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